2026年9月20日(日)
データ分析

順位ツールの数字が、ツールごとに食い違い始めた——Googleのスクレイパー遮断が壊した「他社の順位が見える」前提

9月13日頃からGoogleのスクレイピング遮断が一段と強化され、Nozzleは取得データ約80%減、Sistrixは公式ステータスで収集レート低下を告知した。同じサイトの同じ回復を、ahrefs・Semrush・Sistrixが別々に描いている。順位ツールの数字が「相対比較のインフラ」として機能しなくなったとき、アップデートの影響をどう説明するのか。計測設計の組み替え方を、Search Consoleの生成AIレポート全面展開と合わせて整理する。

WebTech Journal 編集部

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9月18日、Nozzleのデレク・パーキンス氏がSearch Engine Roundtableに語った数字は、順位計測を業務の土台にしている人間には他人事ではない。Google検索からのデータ取得が「約80%減った」というのだ。同氏はDataForSEO経由のデータでも同じ現象を確認したという。

9月13日以降、Googleは「人間でないアクセス」を狩り始めた

Search Engine Roundtableによれば、Googleがスクレイパーの遮断に成功し始めたのは9月13日頃から。9月4日と9月12日の未確認アップデート、9月15日の変動と時期が重なっている。つまり順位ツールの数字が荒れている期間と、Googleが検索結果の配信方法を変えている期間が、そのまま重なっている。

Sistrixは9月16日付でステータスページに「Googleが検索結果の配信方法をさらに変更した。結果として当社のデータ収集は現在、低下したレートで稼働している」と掲示した。同社のスティーブ・ペイン氏は「Googleは約1年間、検索結果の配信方法を継続的に変え続けている。現在は非常に速いペースだ」と述べている。散発的な事故ではなく、常態化した変更のなかの一局面ということになる。

同じ日、Bingでも検索結果の表示前に「あなたは人間ですか」の確認を求める挙動が観測されている。ボット排除は検索エンジン全体の潮流であり、Google固有の話として片付けられない。

同じサイトの同じ回復を、3つのツールが別々に描いた

問題は「データが減った」ことではない。「ツールごとに違う絵が出る」ことだ。

Glenn Gabe氏は、9月4日の未確認アップデートでほぼ100%下落し、その後完全に回復したことを実トラフィックで確認済みのサイトについて、主要3ツールの表示を比較した。結果は、ahrefsは回復を捕捉、Semrushは捕捉したが遅延、Sistrixは回復を捕捉していない、というものだった。

ここが実務上の急所である。順位ツールの数字は、これまでも「Googleの正解」ではなく「サンプリングされた推定値」だった。ただ、その推定の精度がツール間で揃っている限り、相対比較のインフラとしては機能していた。いま崩れかけているのはその前提だ。ツールAでは回復、ツールBでは未回復という状態で、社内やクライアントに「アップデートの影響」を説明できるだろうか。

「自社データ」と「他社データ」の非対称が広がる

ここに、もう一つの構造変化を重ねると見通しが変わる。Googleは2026年6月にSearch Consoleの生成AIパフォーマンスレポートを発表し、8月31日までに全世界の全サイトへ展開を完了している。AI OverviewsとAI Mode、そしてDiscover内の生成AI機能のインプレッションが、ページ別・国別・日別に見られるようになった(ただし現行版にクリックデータは含まれない)。

つまり、自社サイトについての一次データはGoogleが直接、かつ無償で提供する方向に進んでいる。一方で、競合サイトや市場全体の順位分布といった三者データは、スクレイピングという不安定な経路に依存し続けている。この非対称は今後さらに広がると考えられる。Googleにとって、自社データの開示は事業者との関係維持に資する一方、三者スクレイピングは負荷とAI学習データ流出の両面でコストでしかないからだ。

本誌が先日報じたGoogleが「サイトの広告の重さ」を公開データにした——CrUX新指標4つの件も、同じ線上にある。競合の情報が見えるのは、Google自身が「公開データとして出す」と決めた領域に限られていく、という構図だ。

マーケターが今週やるべき3つのこと

  1. 順位ツールの数字に「取得日」と「ツール名」を併記する運用へ切り替える。 単一ツールの数字を「順位」と呼ぶのをやめ、「Semrush計測値(9/18取得)」と書く。表記を変えるだけで、社内の誤読はかなり減る。

  2. 影響判定の一次証拠をSearch Consoleに戻す。 アップデートの影響を論じる根拠は、順位ツールではなくSearch Consoleのクリック・インプレッション・平均掲載順位を主、順位ツールを従にする。生成AIレポートが全サイトに開いた以上、AI面のインプレッションもここで押さえられる。

  3. 9月上旬〜中旬のレポートは、結論を保留する。 9月4日・12日・15日と変動が重なり、かつ計測側も壊れている期間だ。この期間のデータで施策の成否を判断すると、施策ではなくGoogleの配信変更を評価してしまう。

ツールは復旧する。ただし「元通り」ではない

Barry Schwartz氏は「今のところGoogleが勝っているが、ツール側もいずれ方法を見つけるだろう」と書いている。おそらくその通りだろう。過去にも2025年1月に大規模な遮断があり、各ツールは適応してきた。

ただし適応のたびに、取得コストは上がり、更新頻度は落ち、サンプル数は減る。「毎日1万キーワードの順位が当たり前に見える」という2010年代的な計測環境は、静かに終わりつつあるのかもしれない。だとすれば備えるべきは、ツールの復旧待ちではなく、順位というKPI自体への依存度を下げる計測設計のほうだ。

一方で、反論もある。GoogleはAI学習用のスクレイパーを標的にしており、正規のSEOツールは巻き添えにすぎない、という見方だ。この立場からすれば、Googleが両者を区別する仕組み(有償APIなど)を整えれば事態は正常化する。ただし現時点でGoogleがそうした道筋を示した事実はなく、期待として扱うべきだろう。

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