2026年11月7日(土)
業界動向

クリエイター広告が370億ドルで「コアメディア」入り——IAB 2025レポートが描く2026の構造変化と、日本ブランドが「常時稼働」へ切り替えるべき理由

IABが4月に公表した2025年米デジタル広告レポートで、クリエイター広告が前年から急伸し370億ドルに達し、初めて「コアメディアチャネル」と位置付けられた。同レポートはデジタル広告全体が13.9%増の2,946億ドル、SNSは32.6%増の1,177億ドルで全体の40%を占める。一方YouTubeはCTV側で30秒スキップ不可広告の拡大に舵を切るなど、ブランドの軸足は明確に「動画+クリエイター」に寄っている。日本のブランドが今のままキャンペーン型インフルエンサー施策を続けると、世界市場の常時稼働モデルから決定的に置き去りにされる。

WebTech Journal 編集部

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クリエイター広告は「サブ枠」から「メインの柱」になった

IAB(Interactive Advertising Bureau)が4月に公開した「2025 Internet Advertising Revenue Report」で、米国のクリエイター広告支出は2025年に370億ドル、2026年には440億ドルに達する見通しが示された。IABはこの伸び率を理由に、クリエイター広告を「コアメディアチャネル」として正式に位置付けた。

Marketing Diveが報じたように、IABはこの転換を「キャンペーン型インフルエンサー施策から、常時稼働(always-on)のクリエイタープログラムへの移行」と表現している。ブランドはマイクロインフルエンサー、アフィリエイトクリエイター、パフォーマンス型クリエイターを束ねた専任チームと運用基盤を整備し、年間を通じて稼働させ始めた。

同レポートはデジタル広告全体が前年比13.9%増の2,946億ドル、SNS広告が32.6%増の1,177億ドル(全体の40%)に達したことも示しており、クリエイター経済はもはや「SNSの一機能」ではなく、独立した広告カテゴリーとして集計対象に格上げされた。本誌が4月7日に報じたTikTokエンゲージメント率Instagram比7.7倍の調査も、この構造転換の延長線上にある。

YouTubeの「30秒CTV広告」と「90秒誤報」が示す、もう一つの軸

同じ4月、YouTubeはコネクテッドTV(CTV)側で広告フォーマットの長尺化を進めた。Search Engine Landの報道やSocial Media Todayの記事によれば、ユーザーから「90秒のスキップ不可広告」が報告され話題になったが、Googleは「実際は30秒で、タイマー表示のバグだった」と公式に否定している。

本筋はその騒ぎではなく、3月にGoogleがスマートTV向けに最大30秒のスキップ不可広告フォーマットを正式拡大したという事実だ。CTV面では「6秒バンパー」と「15・30秒のスキップ不可」という2軸で、テレビCM的な体験をデジタル側に取り戻しに来ている。

この動きは、IABが示したもう一つの構造シフト——「ストリーミング動画がパフォーマンスとコマースに接続される」——とぴったり対応する。動画は長尺で物語を伝え、クリエイターが発見と信頼を作り、最後にコマース動線でコンバートする。各レイヤーが個別最適化されてきた前段階が終わり、動画+クリエイター+コマースが一つのファネルとして統合され始めたのが2026年だ。

日本ブランドのキャンペーン型施策は、もう「主戦場」ではない

日本企業の多くは、いまだクリエイター施策を「四半期ごとのキャンペーン」「商品ローンチ時の単発タイアップ」として運用している。インフルエンサー1名と1〜2回のPR投稿契約を結び、効果測定はリーチとエンゲージメント率で完結。ここまでが標準プレーである。

しかしIABレポートの示す方向は、その逆だ。ブランドは専任クリエイターチームを常時走らせ、商品開発・コンテンツ制作・販売動線を一体運用する。米国大手では、クリエイター予算がメディアバイイング予算と統合され、年間運用計画に組み込まれている。これは単なる予算配分の話ではなく、組織図の問題だ。広告代理店任せのインフルエンサー施策では、もうついていけない領域に入っている。

日本市場でも、本誌が4月3日に報じた電通デジタルの10種AIエージェント実戦投入のように、エージェンシー側はクリエイター運用+AI制作の常時稼働モデルへ動き始めている。だが事業会社側の発注フォーマットがキャンペーン単位のままだと、エージェンシーの提案も結局キャンペーンに収束する。需要側が変わらなければ、運用は変わらない。

担当者がこの四半期で動かすべき3つのこと

第一に、年間メディアプランの中に「クリエイター予算」を独立した行として持ち込むこと。マイクロインフルエンサー(フォロワー1万〜10万)、アフィリエイト型クリエイター、商品レビュー型クリエイターをそれぞれ別の予算枠で計画し、KPIも別にする。フォロワー数で輪切りにするのではなく、「役割」で輪切りにする発想転換が起点になる。

第二に、CTV・コネクテッドTV面の検証を始めること。YouTubeは現時点で日本のCTV面でも30秒スキップ不可広告を提供している。クリエイターと組んだ長尺動画コンテンツを、CTV面に再配信する設計はすぐにテストできる。本誌が4月20日に報じたTikTok Symphonyの動画一発生成などのAI制作ツールも、CTV用15秒・30秒バリエーションの量産前提で組み合わせるべき時期だ。

第三に、計測フレームを「投稿リーチ」から「コンバージョン寄与」に切り替える準備をすること。IABレポートが示すように、クリエイター広告は今後ブランド指標(リーチ・好意度)だけでなく、パフォーマンス指標(CPA・LTV)でも評価される時代に入る。Shopifyのアフィリエイト連携、Amazon・楽天のクリエイターリンク経由売上など、計測可能な動線を最初から組み込んでおかないと、来年の予算交渉で「常時稼働」の正当化材料が作れない。

クリエイター広告が「コアチャネル」になるとは、単に予算が増えることではない。ブランドの広告組織そのものが、クリエイターを抱え込む形へ再構築されるということだ。日本側がこの組織変革に動き出すまでに、世界の上位ブランドはすでに2サイクル先を走っている。

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