2026年7月29日(水)
SEO

検索の43%にAI Overviews、AI Mode訪問は1年で2.2倍——Googleが"リンク集"から"目的地"へ変わる構造変化と、SEOの新しい防衛線

Similarwebの最新分析で、AI Overviewsの表示率が1年で15%から43%へ急拡大し、AI Modeの訪問数も2.2倍に伸びたことが明らかになった。一方でeMarketerの調査は「AIヘビーユーザーほどGoogleを毎日使う」という意外な併用構造を示す。CTRが半分以下になる世界で、検索流入だけをKPIにしたSEOは成立するのか。複数データを重ね合わせ、ユーザー行動の3つの変化と、日本のSEO担当者が今から引くべき防衛線を分析する。

WebTech Journal 編集部

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「AI検索はまだ様子見でいい」——そう考えているなら、この1年のデータは その前提を崩しに来ている。市場調査会社Similarwebのレポート(TechCrunchが7月27日に報道)によると、Google検索でAI Overviewsが表示される割合は、この1年で15%から43%へと約3倍に拡大した。もはや「一部のクエリに出る実験的機能」ではなく、検索体験の本体になりつつある。

「AIレイヤー」が「検索の本体」になった

Similarwebは今回の分析で、検索の上に載る「AIの層」だった機能が、検索ジャーニーそのものに組み込まれたと指摘している。ユーザーはAI Overviewsに着地し、そこから対話型のAI Modeへと調査を続ける。実際、AI Modeの訪問数は2025年6月の1億2,600万から2026年5月には2億7,900万へと約2.2倍に増えた。

注目すべきは検索クエリの変化だ。Similarwebのデータでは、この1年でGoogle検索の平均クエリ長が伸びている。短いキーワードの組み合わせから、AIに向けた自然文・会話文へ。ユーザーは「検索の仕方」自体を作り変え始めている。

データが示す3つの行動変化

変化1: AIと検索は「置き換え」ではなく「役割分担」

eMarketerが2026年5月に実施した調査(米国のネットユーザー1,570人対象)では、週次でAIを使うユーザーの82%がGoogle検索を毎日使っており、ネットユーザー全体の71%を上回った。AIのヘビーユーザーほどGoogleを使っている。同記事が引くYouGovの調査では、AI検索利用者の63%は「特定の質問への直接回答」を求めてAIを使い、複数ソースの比較・回遊は依然として検索エンジンの役割だという。

変化2: それでもクリックは減る

併用構造があるからといって、サイト流入が守られるわけではない。Ahrefsの調査(2025年12月時点・30万キーワードのデータ)では、AI Overviewsが表示される検索結果において、1位ページのCTRは58%低下したと報告されている。同社が約8カ月前に報告した34.5%減から、悪化が加速している。検索は使われ続けるが、クリックは戻らない——この2つは矛盾なく同時に進行する。

変化3: 若年層ではタスクごと消える

eMarketerの記事が引用するComscoreのデータでは、Z世代によるソフトウェア系サイトへの訪問は5カ月で約43%減少した。ファイル変換やフォーマット調整のような「作業系のニーズ」は、検索経由でツールサイトに行くのではなく、AIの中で完結し始めている。検索流入の減少は一様ではなく、「どの種類のニーズがAIに吸われるか」で明暗が分かれる。

パブリッシャーの反乱と表裏一体

本誌は先日、USA TodayやPoliticoなどがGoogleへのクロール提供の全面見直しを検討している動きを報じた。今回のSimilarwebのデータは、その反乱の背景をユーザー行動の側から裏付けるものだ。Googleがリンク集ではなく「滞在する目的地」になるほど、コンテンツ供給者に返るトラフィックは細る。供給側の交渉と、利用側の行動変化は、同じ構造変化の表と裏である。

一方で、逆流も起きている

悲観一色ではない。Similarwebによると、ChatGPTのAI回答に引用が含まれる割合はこの1年で5倍以上に増えた。さらに米国のChatGPTデスクトップ利用では、2026年5月7日の検索アップデート以降、参照リンクから実際にWebページへ着地する訪問の比率が3月の25%から5月末には約60%へと倍増している。リンクが目立つ形で提示されれば、ユーザーはクリックする。AI経由の流入は小さいが、設計次第で伸びる余地があることを示すデータだ。ただし、引用を含むクエリは米国ChatGPTデスクトップ検索の6.8%にとどまり、現時点で失われた検索流入を代替する規模ではない。

日本のSEO担当者が引くべき防衛線

ここからは筆者の考察になる。国内でもAI Overviewsの表示は日常の光景になりつつあり、米国のデータが示す構造変化は時間差で日本にも及ぶと考えるのが自然だ。打つべき手は3つあると筆者は見る。

第一に、KPIの再設計。検索流入セッション数だけを追う体制では、実態を見誤る。AI Overviews・AI Mode・ChatGPT等での「言及・引用のされ方」を観測対象に加え、流入の質(指名検索・CV寄与)で評価する体制への移行が急務だ。

第二に、クエリの長文化・会話化への対応。キーワード単位の最適化から、「質問に対して引用されうる、根拠と一次情報を持った回答コンテンツ」への投資へ。引用率が5倍に伸びている今は、引用元として選ばれるための先行投資の時期といえる。

第三に、AIに吸われるニーズと残るニーズの仕分け。自社サイトへの流入のうち、「作業系・即答系」のクエリはAIに置き換えられる前提で、比較検討・信頼確認・購入直前といった「サイトに来る理由が残る」クエリに資源を寄せる。Z世代のソフトウェアサイト離れは、この仕分けを怠ったカテゴリの末路を先取りしている。

検索が死ぬのではない。検索の「出口」が変わるのだ。出口の変化に合わせて計測と投資先を組み替えられるかが、この1〜2年の分水嶺になる。

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