2026年11月7日(土)
業界動向

「Google遮断」が交渉カードになった——USA Today・Politico・Redditのクロール拒否検討と検索広告17%成長が示す、"クロールと引き換えのトラフィック"という暗黙契約の終わり

AI Overviewsによるクリック減少を受け、USA Today、Politico、ロイター、The Economistなどの大手パブリッシャーがGoogleへのクロール提供を全面的に見直し、完全遮断も選択肢に含めて検討していると報じられた。Redditは年6,000万ドルのライセンス契約の不更新を協議しているという。一方でAlphabetのQ2決算は検索広告収益が前年比17%増の633億ドルと過去最高水準。コンテンツを供給する側と収益を集約する側の非対称が極まる中、「クロールさせればトラフィックが返ってくる」という四半世紀の暗黙契約が壊れたら何が起きるのか。マーケターが今から打つべき手とあわせて分析する。

WebTech Journal 編集部

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「クロール拒否」を口にし始めた大手パブリッシャー

Search Engine Roundtableが7月23日に伝えたところによると、USA Today、Politico、ロイター、The Economist、People Inc.といった大手パブリッシャーが、Googleにコンテンツをクロールさせることで得られる対価を再評価しており、一部はクローラーの完全遮断を選択肢として真剣に検討している。Redditも、2024年にGoogleと結んだ年間6,000万ドル規模のデータライセンス契約について、AI利用向けアクセスの遮断や契約不更新の可能性を協議していると報じられた。

背景にあるのはAI Overviews(AIによる概要)だ。AI Overviewsが表示された検索結果ではクリック率が34〜46%低下するとの調査があり、引用元サイトへのクリックが58%減ったとする分析もある。数字は調査により幅があるが、方向は一致している——答えが検索結果内で完結すれば、リンクは踏まれない。

一方のGoogleは過去最高水準の四半期

対照的に、7月22日発表のAlphabetのQ2決算は総収益1,198億ドル(前年比24%増)、検索広告収益は633億ドル(同17%増)と絶好調だった。Googleの検索責任者Nick Fox氏は「AI検索経由で毎週数十億クリックをWebサイトに送っている」と反論する。さらに同じ週、EUはデジタル市場法(DMA)違反でGoogleに合計約10億ドルの制裁金を科した。コンテンツを供給する側の収益が細り、集約する側が最高益を更新する——この非対称が、遮断検討の土壌になっている。

Googleも無策ではない。従来検索には表示されたまま、AI生成機能へのコンテンツ利用だけをオプトアウトできる新しいコントロールをSearch Consoleでテストしていると報じられており、パブリッシャーの離反を防ぐ妥協点を探り始めた。

筆者の見立て:「遮断」は実行するより、ちらつかせる方が効く

大手が実際に一斉遮断へ踏み切る可能性は、現時点では高くないと筆者は見る。検索流入を自ら断つ痛みは大きく、遮断はむしろライセンス交渉の武器として機能するからだ。Reddit×Googleのような有償ライセンスの前例は、「コンテンツはタダでクロールさせるもの」という前提を既に崩している。この構造で恩恵を受けるのは交渉力のある大手メディアで、割を食うのは遮断カードを持たない中堅以下のメディアだ。コンテンツ供給の二極化が進むと考えられる。

日本でも日本新聞協会が生成AI検索によるコンテンツ利用への懸念を繰り返し表明しており、対岸の火事ではない。検索経由のメディア流入が細る流れは、言語圏を問わず構造的だ。

マーケターへの示唆:紹介流入の前提を書き換える

自社メディアやオウンドコンテンツの担当者が取るべき手は3つある。

  1. KPI設計の見直し: 検索紹介流入の構造的減少を前提に、セッション数偏重の目標を成果指標へ寄せる
  2. ファーストパーティ接点の強化: ニュースレター、アプリ、コミュニティなど、プラットフォームを介さない読者接点の比率を高める
  3. AI経由露出の計測整備: 本誌が報じたSearch Consoleの"AIレポート"のように、AIに引用された露出を可視化する体制をつくる

「クロールさせるか否か」は大手メディアの交渉ごとだが、「AIに引用される価値をどう回収するか」は、規模を問わず全サイト共通の宿題である。

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