Google広告の管理画面から、9月中に設定項目がひとつ消える。キャンペーンレベルの言語ターゲティングだ。長年、検索キャンペーンを作るときに何も考えず「日本語」にチェックを入れてきた運用者にとっては、選択肢が消えるだけの些細な変更に見えるかもしれない。だが同じ9月に、Googleはもうひとつ別の方向の変更を始めている。両方を並べると、9月に起きているのは単なる設定削除ではないことがわかる。
公式ヘルプに書かれた「設定は不要になる」
Google広告ヘルプの「言語ターゲティングについて」(About language targeting)には現在、2026年9月から検索キャンペーンとP-MAXキャンペーンの検索ネットワーク部分について言語ターゲティングの動作が変わる、という注記が掲載されている。検索キャンペーンでは、キャンペーンレベルの言語ターゲティング設定そのものが削除される。今後は「広告の言語」に基づいて自動的にマッチングされる。P-MAXについては少し複雑で、Google検索ネットワークに表示される広告にはキャンペーンレベルの言語設定が適用されなくなる一方、YouTube・ディスプレイ・Discover・Gmailなど他のチャネルには従来どおり適用される。ショッピング広告は言語設定の影響を受けない。Googleは「広告主による対応は不要」と明記している。
ヘルプ内の比較表はさらに踏み込んでいる。現在は「ユーザーがクリエイティブとLPの言語を理解できるか」と「キャンペーンの言語設定がユーザーの言語と一致するか」の2条件で判定していたものが、今後は前者だけになる。そして優先順位のルールとして「検索語句の言語に一致する広告を優先する」と書かれている。Search Engine Landは、この変更を「ブラウザがスペイン語に設定されているが普段は英語で検索するユーザーには、どちらの言語の広告も表示されうる」と説明している。
同じ9月、完全一致がAI Modeに出始めた
9月4日、Search Engine RoundtableのBarry Schwartz氏が、Google広告のリエタンであるGinny Marvin氏から「これは最近始まった小規模な実験だ」との回答を得たと報じた。実験の内容は、完全一致・フレーズ一致という制限の強いマッチタイプを使った通常の検索キャンペーンが、AI Modeの広告面に配信されるというものだ。Marvin氏はLinkedInのコメントで、完全一致とフレーズ一致のキーワードがAI Modeでテキスト広告を配信する資格を持つこと、ただし「明示的で直接的なユーザーの意図がある場合に限られる」ことを補足している。
これを最初に見つけたAnthony Higman氏は「これまでAI Modeのような面に出る唯一の方法は、AI Max、P-MAX、あるいは部分一致+スマート自動入札だった」と指摘している。つまり、AI Modeの在庫は自動化商品を買った広告主への実質的な報酬だった。それが崩れつつある。
本誌が先日報じたAI Modeの中身が3週間で入れ替わった——Gemini 3.8 Flash投入のとおり、AI Modeの生成部分は短いサイクルで差し替えられている。広告在庫の開放も、同じテンポで動いていると見るべきだろう。
移行スケジュールも9月に集中している
三つ目の動きが自動移行だ。Search Engine Landによれば、Googleはキャンペーンレベル部分一致と旧来の自動作成アセット(ACA)の新規作成を8月3日に停止し、既存キャンペーンのAI Maxへの自動移行を9月1日から30日にかけて実施している。一方、動的検索広告(DSA)のAI Max移行は2027年2月へ、5カ月延期された。第4四半期の商戦期にリスクを持ち込みたくないという広告主のフィードバックが理由とされる。
「9月に全部変わる」わけではない、という点は正確に押さえておきたい。9月に自動移行されるのは部分一致とACAであり、DSAではない。ここを混同したまま社内に説明すると、必要のない作業が発生する。
交差して見えるもの:絞り込みの主体が設定から素材へ移る
三つを重ねると、方向は一つだ。キャンペーン設定によって配信対象を絞る手段が縮小し、代わりに広告文とランディングページそのものが絞り込みの信号になる。
言語ターゲティングの廃止は「広告の言語で判定する」と言い換えられる。マッチタイプの意味も変質する。完全一致は「この語句だけに出る」という約束ではなく、「AI Modeを含む面に出るための、意図の明確さを示す信号のひとつ」に近づいた。本誌が9月6日に報じたGoogle広告の制限付き配信が全プロダクトへという動きと合わせれば、審査・在庫・マッチングのいずれもがGoogle側の判断領域に寄っている構図が見える。
この変化の恩恵を受けるのは、広告文とLPの言語・内容が一貫している広告主だ。不利になるのは、設定で無理やり配信を歪めていた広告主——たとえば日本語LPしか用意せず、言語設定だけで海外からの流入を切っていたケースである。
日本の広告主が9月中に見るべき3点
第一に、多言語LPを持つ広告主の言語分岐。訪日インバウンド、越境EC、外国人材採用など、日本語ページと英語ページを別に用意している広告主は、これまでキャンペーンの言語設定で出し分けていた可能性が高い。今後はLPと広告文の言語がそのまま判定材料になるため、片方の言語のLPに他方の言語の広告文が紐づいているような構成は、真っ先に整理すべきだ。
第二に、在留外国人・訪日客への露出の増減。日本語の広告が、ブラウザ設定が外国語で日本語検索も行うユーザーに出る余地が広がる。逆もある。地域ターゲティングは残るので暴走はしないが、検索語句レポートの言語構成は9月末以降に一度確認しておきたい。
第三に、AI Mode経由の流入の見分け方。完全一致キャンペーンにAI Mode由来のインプレッションが混ざり始めても、管理画面で面を分けて見る手段は限られる。実験段階の今のうちに、キーワード単位のCTRとCVRのベースラインを控えておくと、あとから「何が変わったのか」を語れる。
ただし、過剰反応も禁物だ
一方で、日本語圏の影響は英語圏より小さいという見方もできる。日本語の検索語句・広告文・LPは言語判定が比較的容易で、そもそも日本語で書かれた広告が非日本語話者に大量配信されるシナリオは考えにくい。Googleが「対応は不要」と言い切っているのも、多くのアカウントでは実際に何も起きないからだろう。
AI Modeへの配信も、Marvin氏の言葉どおりなら「小規模な実験」であり、明日から予算構成を変える話ではない。Higman氏が「小規模とは思えない」と反発しているのは、実験の規模ではなく、これまで自動化商品でしか買えなかった在庫のルールが変わったという事実の重さについてだ。
運用者がいますべきなのは、設定を触ることではない。設定でしか説明できなかった配信ロジックを、広告文とLPで説明できる状態に置き換える作業である。9月はその締め切りとして機能する。
出典
- About language targeting - Google Ads Help(公式ヘルプ/一次ソース)
- Google Ads is removing language targeting from Search campaigns - Search Engine Land
- Google Ads Testing Serving Restrictive Match Types In AI Mode - Search Engine Roundtable
- Google sets AI Max migration timeline for Search campaigns - Search Engine Land