GEO(生成AI向けの最適化)を売り込む提案書に、「関連サイトを多数立ち上げ、同じ主張を複数の第三者に語らせる」という施策が混じっていたら、一度立ち止まったほうがいい。AI企業のルールが、その手法を名指しで禁じ始めた。
何が決まったのか
Anthropicは10月8日に改定版の利用規約を公開した。施行は11月12日。新設された「欺瞞的キャンペーン・人為的活動を行わない」の節では、検索エンジンやAIシステムが回答を引き出すソースの操作を禁止している。具体例として挙がるのは、独立した情報源を装って同じ主張を裏づけ合うサイト網だ。偽のペルソナ、偽レビュー、ボットの人間偽装も同じ節で扱われ、政治・商用の両方が対象となる。改定内容の解説によれば、従来は選挙・詐欺・偽情報などの節に分散していた規定を一本化した形だ。
背景にある摘発事例
規約改定と同時期に出た2026年9月の脅威インテリジェンスレポートには、象徴的な事例がある。フランスの広告会社LKM Companyと結びつく約70の「地域ニュースサイト風」のサイト群で、Claudeを使い、少なくとも8,913本の記事を約20言語で量産していた。Anthropicはアカウントと組織をBANし、観客を獲得する前に活動を止めたと説明している。レポートは、これらのサイトが実際に検索順位やAI回答に影響したかまでは述べていない。
「GEO」と「操作」の線はどこにあるか
ここからは筆者の考察である。線引きの軸は「出所と独立性の開示」にあると見る。自社が運営する比較サイトを自社運営と明記して公開する、専門家の署名入り寄稿を公開する、といった施策は、AIに引用されやすい構造を整える通常の最適化にあたる。一方、運営元を隠した「中立の第三者」を装う網は、この規約が狙う対象そのものだ。
日本の読者にはなじみのある構図でもある。2023年10月に始まったステルスマーケティング規制は、広告であることを隠した表示を問題にした。AI向けの施策は人間の読者ではなくモデルを相手にしているが、「誰が言っているのか」を偽る点で同じ論理に立つ。GEO市場の構造は本誌の日本版GEO市場の3つの層で整理したが、その外側にグレーな施策が育つ余地はある。
反論と限界
留意点は3つある。第一に、この規約が縛るのはClaudeの利用者であり、他社のAIで同じことをする行為は直接の対象外だ。第二に、SEJによればGoogleのスパムポリシーも生成AIの回答操作をスパム扱いしている。ただし、規約や方針がどこまで実効性を持つかは現時点で見えていない。第三に、AI利用で作られたコンテンツ自体が禁止されたわけではない。実際、旧規約にあった「ジャーナリズム的コンテンツの自動生成」の高リスク扱いは、新版の高リスク一覧から外れている。
11月12日までにやること
- 委託先が運営している「独立風」サイトやメディアがないか、運営者情報と契約範囲を確認する。
- 自社が関わる比較・口コミ・Q&A面で、運営関係の開示が明確かを点検する。
- GEO施策の提案を受ける際は、手法の一覧に「第三者を装う設置」が含まれていないかを確認事項に加える。
AIに推薦される状態を作ることと、AIをだますことは別物だ。今後の評価を分けるのは、その違いを説明できるかどうかになる。