「AIで作った広告です」という表示は、もう仕様として動き始めている。Googleは7月9日、公式ブログで、検索・YouTube・Discoverの広告に、AIで作成・編集されたかを確認できる仕組みを導入すると発表した。広告の三点メニューや情報アイコンからマイ アド センターを開くと、「How this ad was made」のパネルが表示される。
何が変わったのか:開示が「運用設定」になった
Googleの説明では、仕組みは2通りだ。Googleの生成AIツールで作った広告は、開示情報がパネルに自動で追加される。他のツールで作った場合は、広告主が「生成AIを使った」と示すコントロールを使う。パネル自体は世界共通だが、広告そのものにラベルを出すかどうかは、地域の要件によって変わるという。
Google広告のポリシーページには、運用面の変更も書かれている。7月から、画像・動画クリエイティブの中にAIを示すテキストや視覚的なラベルを入れることが認められ、その表記は文字オーバーレイや透かしに関するポリシー違反にならない。AIラベルの設定は、Google広告、DV360、CM360、Merchant Center、Ads Editorに7月を通じて順次展開された。同ページは、この設定を使っても特定の法規制への準拠が保証されるわけではなく、法的助言を受けるよう求めている。
なぜ今か:EU AI法の期限が重なる
ポリシーページは、変更の背景としてEU、インド、ニューヨークの規制に言及している。このうちEUについては、欧州委員会の解説で、AI法の透明性規則(第50条)が2026年8月2日から適用されたとされる。AI生成コンテンツには機械可読な表示が求められ、ディープフェイクの利用者は開示が必要になる。8月2日より前に市場に出た生成AIシステムの表示義務には、2026年12月までの猶予がある。違反の制裁金は最大1,500万ユーロまたは全世界売上高の3%だ。
つまり、猶予が切れる12月に向けて、プラットフォーム側が表示の仕組みを整えている。これは筆者の見立てだが、ラベルの設定項目は、規制対応の「受け皿」として先に用意されたと考えられる。
もう1つの論点:Google自身が広告文を生成している
同じ7月、Googleは検索広告に続き、ショッピング広告でもAI生成の説明文をテスト中だと報じられた。Search Engine Roundtableによると、Googleはこれを「AI生成のコンテキストが、より情報に基づいた判断を助けるかを見る小さな実験」と説明している。一方、広告主の間にはクリック率への影響を懸念する声がある。
広告主が作っていない文面が、広告主の名前で配信される。開示のルールが整うほど、「誰が何をAIで作ったか」の責任範囲は、運用者が説明できなければならなくなる。
日本の運用者は何をするか
日本にどう適用されるかは、現時点で明確に確認できていない。Googleの発表は日本での表示の扱いに触れておらず、日本向けの義務を定めた法令も、筆者が一次情報で確認できた範囲には見当たらない。ただし、次の3点は今すぐ点検できる。
- 制作過程の棚卸し: どのクリエイティブを、どのAIツールで作成・編集したかを台帳にする。後から「AI作成か」を聞かれて答えられない状態を避ける
- ラベル設定の運用ルール化: Google以外のツールで作った素材に、申告コントロールを使うかを社内で決める。EU向けに配信している広告主は、法務に確認する
- AI生成説明文の把握: 自社の広告がどのAI機能の対象かをアカウント設定で確認し、ブランドや表現のルールに反する文面が出ていないかを定期的に見る
景品表示法の不当表示規制は、制作手段にかかわらず広告の内容に適用される一般原則であり、「AIが作ったから」は免責にならない。開示の整備と表現の品質管理は、別々の課題として並行して進めたい。