2026年11月7日(土)
業界動向

HubSpotはブログ流入の約8割を失っても売上を伸ばした——「流入は誤った採点表だった」発言から読む、KPIの組み替え方

HubSpotのCMOは、AI回答の普及でブログのオーガニック流入が約8割減っても、2025年の売上は19%増だったと語った。自己申告の数字や人員削減報道という限界も踏まえつつ、流入KPIから商談寄与・AI上の存在感へ採点表を移す意味を、日本のオウンドメディア運用者向けに整理する。

WebTech Journal 編集部

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HubSpotのCMOが「ブログのオーガニック流入は約8割失った。それでも売上は伸びた」と語った。月間2,000万訪問超だったブログが、AI回答の普及で大きく縮んだ形だ。Search Engine Journalのインタビュー記事でKipp Bodnar氏は、「流入は15年間、我々が失敗していると告げていた」と振り返っている。インバウンドマーケティングの教科書を書いた会社の言葉として、重い。

事実:流入は減り、売上は伸びた

同記事とHubSpotの決算資料(SEC提出)から確認できる数字は次のとおり。

  • ブログのピークは月間2,000万訪問超。AI回答の拡大とともに約80%減(同氏の説明)
  • 2025年通期の売上は31.3億ドルで前年比19%増(為替一定で18%増)
  • コンテンツ由来リードの約90%は、ブログ以外の新しいチャネル(ニュースレター、クリエイター施策、ポッドキャスト、YouTube)から
  • AI回答経由で訪れる人のコンバージョン率は、従来検索の約3倍(同氏の説明)

HubSpotはニュースレターのThe Hustleを2021年に買収し、ポッドキャストを2021年、クリエイタープログラムを2022年、YouTubeネットワークを2023年に立ち上げてきた。つまり「流入を失ってから慌てた」のではなく、数年かけて検索依存を薄めていた。

考察:KPIを入れ替えられた会社だけが耐える

筆者がこの発言で重要だと見るのは、数字よりも採点表の変更だ。同氏は、見る指標を「収益/訪問」「AI上のシェア・オブ・ボイス」「コンテンツが影響した商談」へ移したと説明している。

日本の多くのオウンドメディアは、いまもセッション数とPVを月次報告の主役に置いている。これらが減ったとき、現場には「記事を増やす」か「報告の言い訳を考える」しか選択肢がなくなる。WebTech Journalが直近で取り上げたAI検索の引用とブランド言及を4象限で測る方法や、GEOの測り方と契約の標準は、まさにこの採点表の再設計に必要な部品だ。

割り引いて読むべき点

この事例を万能の処方箋にするのは危うい。理由は3つある。

  1. 数字の多くは自己申告: AI経由リードの増加率(1年間で1,850%増とされる)や商談数は、第三者検証のない社内データだ。母数が小さい時期からの伸びである可能性もある
  2. HubSpotは例外的に強いブランド: ニュースレターやYouTubeに投資できる資本とブランド認知があった。中小のBtoB企業が同じ分散を再現できるとは限らない
  3. 好調一色ではない: 同社は10月6日に約660人(全体の約7%)の人員削減を発表したと報じられている。同氏は記事内でこの質問に答えていない。SEJの記述は報道ベースだ

さらに、同氏自身も「AI回答で自社が引用されてもクリックされない」ため、相関的なシグナルにすぎないと認めている。

日本のマーケターが今週できること

  • 月次レポートの先頭を「流入」から「商談・受注への寄与」へ並べ替える試案を作る
  • 流入が多くてもCVに結びつかない記事を棚卸しし、統合・削除の候補にする(HubSpotも低価値コンテンツを整理したと説明)
  • 自社ブランドがAI回答に引用される頻度を、クリックと切り離して記録し始める

流入が減ること自体は避けられない。問われるのは、減った流入の中身を説明でき、減らない指標を別に持っているかどうかだ。

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