自動化への賛否は、もう論点ではなくなりつつある。論点は「測れるか」だ。
8月20日、GoogleがGoogle広告とAI Maxに新しい実験・計画機能を投入すると発表した。検索広告プロダクトマネジメント担当ディレクターのBrandon Ervin氏の署名で公開された内容は3点ある。
発表された3つ
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9月から、複数の検索キャンペーンをまたぐ単一のA/Bテスト。 AI Maxのワンクリック実験を土台に、異なる予算とROI目標を複数キャンペーンで同時に検証できる。Googleの表現では「キャンペーンをスケールさせたときに、それが最終的な利益にどう跳ね返るのかを正確に見られる」。
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ブランド・ロケーションのパラメータを有効にしたままAI Max実験を実行できる。 Googleは「特定のブランドや地域の制御に依存している場合、A/Bテストがよりシンプルになった。ガードレールを妥協せずにAI Maxの影響をテストできる」と説明している。
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Performance Plannerが入札・予算目標の変更影響を予測し、ワンクリックで適用できる。 予測して終わりではなく、提案をそのままキャンペーンへ反映できるようになった。
Search Engine Roundtableは、これに合わせてGoogleが「AI Max実験について」のヘルプドキュメントを大幅に更新したことも指摘している。
見出しは1番だが、効くのは2番
リリースの主役は複数キャンペーン横断A/Bテストだ。しかし日本の運用現場で意思決定を変えるのは、おそらく2番目のほうだと筆者は見ている。
AI Maxのようなキーワード拡張機能を検証するとき、実務者が最初にぶつかる壁は精度ではなく検証条件だった。ブランドキーワードの扱いや配信地域の制御は、多くのアカウントで「触ってはいけない前提」として固定されている。指名検索の刈り取り単価が崩れる、商圏外に配信が漏れる、といった実害が読めるからだ。その前提を外さないとテストできないなら、そもそもテストは稟議を通らない。
「効果があるかもしれないが、安全に試せないので試さない」という状態が、この1年のAI Max導入の実質的なボトルネックだった。今回の変更は、その1点だけを解いている。地味だが、意思決定の順序を変える種類の変更だ。
9月に予定が集中する
タイミングは楽ではない。本誌が8月20日に報じたとおり、Microsoft広告のAI Maxが全世界解禁され、9月にはGoogle側でも言語ターゲティングの廃止とACAの自動アップグレードが重なる。さらに8月20日には、予算上限のキャンペーンで「目標より成績が良すぎるCPA」の挙動が変わった。
つまり9月は、プラットフォーム側の変更とテストの実施期間が重なる月になる。これは実験設計として最悪の条件だ。A/Bテストは対照群と実験群に同じ外部条件がかかることを前提にするが、期間中に配信面やターゲティング仕様が変われば、その前提が崩れる。
現実的な打ち手は2つ考えられる。ひとつは、9月の仕様変更が反映されきる前に短期のベースライン計測を回して、変更前後の素の数字を押さえておくこと。もうひとつは、テスト期間をあえて10月以降にずらし、9月は「何が変わったか」の記録に徹すること。どちらを選ぶにせよ、変更の日付を自分のアカウント側でメモしていないと、後から効果を分解できない。
「ガードレール付きで測れる」ことの副作用
慎重な見方も付け加えておきたい。ガードレールを維持したままテストできるということは、裏を返せばガードレールがある状態の結果しか得られないということでもある。AI Maxの本来の価値が、まさにその制約の外側にあるキーワードやロケーションの発見にあるのだとすれば、この条件下のA/Bテストは効果を過小評価する可能性がある。
結果が「効果なし」と出たとき、それがAI Maxの限界なのか、自分がかけた制約の限界なのかは、テスト設計だけでは分離できない。ガードレール有りと無しの両方を段階的に回せる予算があるアカウントは、その順序も含めて設計したほうがいい。
今週やること
AI Maxを「検証できないから保留」にしていたアカウントは、その保留理由が消えたかどうかを確認する。ブランド・ロケーションのパラメータを有効にしたままの実験が自分のアカウントで作成できるかを、実際にUI上で試す。作れるなら、9月の仕様変更前にベースラインの2週間を確保する。作れないなら、順次展開待ちとして9月頭に再確認する。
判断を先送りする理由が1つ減った。それがこの発表の意味だ。