2026年10月12日(月)
業界動向

AI Modeは外部クリックを18.8ポイント奪い、満足度も下げた——実験・訴訟資料・Chartbeatの3データが示す「検索流入の前提」の崩れ方

AI Modeで外部クリック率が18.8ポイント低下したという実験、Bingチャットで最大9割超のクリック率低下を示す訴訟資料、Google検索流入が前年比40.2%減というChartbeat調査。性質の異なる3つのデータを層ごとに整理し、証明されたことと未検証のことを切り分けたうえで、日本の実務者が自社データで確かめる3点を示す。

WebTech Journal 編集部

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「AIが答えるほど、サイトは訪問されなくなる」。この直感を裏づけるデータが、この1か月余りで3種類そろった。ただし性質がまるで違うため、並べて読むには注意がいる。

1. 実験:AI Modeは外部クリックを18.8ポイント減らした

arXivに8月18日に投稿された論文は、米国のChromeユーザー1,100人を対象にした事前登録型のフィールド実験だ。Search Engine Landの解説によると、2026年3月に7日間、通常検索・AI Overview非表示・AI Mode強制の3群に分けて比較した。AI Modeの群は外部サイトへのクリック率が通常検索より18.8ポイント低く、逆にAI Overviewを消すとクリックは8.8ポイント増えた。内訳ではRedditが21.2ポイント、ニュースサイトが12.5ポイント、Wikipediaが9.9ポイント減っている。

見逃せないのは満足度だ。AI Modeの群は満足度・有用性・Googleへの信頼がいずれも低下した。クリックを奪いながら体験も改善しない、というのが論文の主張である。一方で限界もある。標本は若く高学歴に偏り、実験前のAI Mode利用は検索全体の0.6%にすぎなかった。「強制された」状況は、自発的な利用とは違う。

2. 訴訟資料:チャット型ではリンクが押されない

9月17日に提出された出版社側の書面は、OpenAIとMicrosoftを相手取った著作権訴訟の資料だ。Microsoftのデータとして、Bingのチャットでは通常のウェブ検索と比べ、ニューヨーク・タイムズ系サイトで87〜93%、Ziff Davis系で51〜94%のクリック率低下が示されたという。OpenAIのエンジニアが2023年に「どれだけ目立たせてもリンクは押されない」という趣旨の発言をしていたことも引用されている。ただしこれは原告の主張であり、被告は反論している。事実として確定した数字ではない。

3. 実績:Google検索からの流入は前年比40.2%減

Chartbeatの2026年版調査では、パブリッシャーへのGoogle検索流入が2025年7月から2026年7月までで40.2%減った。前年の減少幅は21.9%で、下落は加速している。Discoverも34.3%減。一方で直接流入は13.5%から15.9%へ、ダークソーシャルは7.1%から11.3%へ増えた。ただしデータはニュース・メディア寄りの顧客網に偏っており、EC・BtoBなどにそのまま当てはまるとは限らない。

交差分析:3つの層が同じ方向を指す

実験は「因果」、訴訟資料は「製品内部のデータ(主張)」、Chartbeatは「現実の集計」を示す。層が違うのに向きが揃っている点が重要だが、注意が必要だ。因果を証明したのは1つ目だけで、2つ目は係争中、3つ目はAIが原因とは限らない。筆者は、「AI回答が検索流入の一部を代替している」可能性が高い一方、下落幅の大半をAIで説明できるかは未検証と見る。

本誌が先日取り上げたAI検索でのブランド露出の寡占は、この流れの「その先」の話だ。クリックが減るなら、勝負は回答内に名前が出るかどうかに移る。

日本の実務者への示唆

日本でのAI Modeの利用実態や、日本サイトの減少幅は、ここで挙げたデータからは分からない。海外で起きたことが日本でどう現れるかは、自社データで確かめるしかない。次の3点をすすめる。

  1. Search Consoleで検索流入を分解する:情報系クエリと指名・購入系クエリを分け、どこが減っているかを見る
  2. 流入の"質"をKPIに入れる:直接流入、メルマガ、指名検索の伸びも同時に追い、検索一本足を見直す
  3. クリック以外の成果を定義する:引用・言及・指名検索の増減を測る仕組みを作っておく

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