2026年9月2日(水)
SEO

「AI Overviewでクリック47%減」——Pewの一次データとSemrushの逆説が示す、ゼロクリック検索の本当の構造

AI Overviewの拡大とともに語られる「ゼロクリック検索」だが、Pew Researchの一次調査とSemrushの10M件キーワード分析を重ねると、語られているほど単純な構図ではないことが見えてくる。AI Mode・AI Overview・従来検索を切り分けたうえで、ペアキーワードでの推移分析が示す逆説と、日本のSEO担当者が今すぐ取れる打ち手を解説する。

WebTech Journal 編集部

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数字の前提を揃える:「AI Overview」と「AI Mode」を混同しない

ゼロクリック検索を語る記事の多くで、いくつかの統計が混在している。まず分けて読まなければならない。

Pew Research Centerが2025年7月に公表した調査では、900人の米国成人の実際のブラウジングデータを基に、AI Overviewが表示された検索で従来型リンクをクリックした割合が8%で、AI Overviewなしの15%と比較して概ね半減したことが報告された。AI Overview内のリンクをクリックした割合はわずか1%である。AI Overviewが出た2025年3月の米国検索のうち、約18%でAI Overviewが表示されている。

これは「組織的なリンク経由クリックが大きく減る」一次データだ。Search Engine Landも同調査を受け、出版社が指摘してきた現象が裏付けられたと整理している。

一方、SNSやAIマーケ系のブログでよく見る「93%がゼロクリック」は、Pewの数字ではない。これは別系統で、GoogleがAI Overviewとは別に展開している専用の生成AI検索体験「AI Mode」での参照URLクリック率にまつわるレポートで、Semrushが公開しているAI Mode SEO Impactレポートが出所だ。AI Modeはユーザーが明示的に切り替えて使う実験的UIなので、デフォルトの検索UIに表示されるAI Overviewと同列に語ると、現場感覚が歪む。

Semrushの「逆説」:AIOが付いたキーワードはむしろゼロクリック率が下がっていた

ここからが面白い。Semrushの2025年AI Overviews Studyは、10M超のキーワードを分析した上で、約20万キーワードを「AI Overview登場前」と「登場後」で同一キーワードペアとして追跡している。

結果は予想と逆を行く。AIOが表示されたキーワードのゼロクリック率は、登場前の33.75%から登場後は31.53%へ低下した。つまり同じキーワードで見ると、AI Overview付与によってゼロクリック率は上がっていない。母集団全体で見るとAIO付きキーワードはゼロクリック率が高いが、これは「もともとゼロクリック率の高い情報質問型クエリにAIOが優先的に出る」というセレクションが効いているからだ、というのがSemrushの読み方である。

この所見は、Pewが報告する「AI Overviewありの方がクリック総数が半分になる」観測と矛盾するように見える。だが両者は別の現象を切っている。Pewは個別ユーザーのセッションでの行動、Semrushは同一クエリの集計レベルでのゼロクリック率を測っている。クリック総量は減るが、AIO登場で新規に「ゼロクリックになる」クエリは思ったほど発生していない、と整理するのが筆者の読み方だ。

日本市場への示唆:海外議論の「AIOショック」をそのまま輸入しない

Search Engine Landの別記事は、AI Overviewの表示率が2025年7月にピークの約25%まで急増した後、11月時点で約16%まで縮小したと指摘する。Googleは特にEC・トランザクション系クエリでAIOを引き下げており、AI回答がコンバージョンに繋がりにくいことが背景にあるとされる。

日本市場でも、AI Overviewの本格展開は段階的に進んでいる。海外メディアの議論を踏まえつつ、日本のSEO担当者が今期取るべき打ち手は次の3つだ。

ひとつ、クエリ階層ごとのCTRトラッキング。自社の主要キーワードを情報質問型(〜とは系)、ローカル系、商標・トランザクション系にセグメント分けし、AIO表示比率と実CTRをGoogle Search Consoleで個別に追う。「商標・トランザクション系はCTR維持、情報型はAIOに食われている」というSemrush・Pewの傾向が、自社で再現されるか確かめる作業が出発点になる。

ふたつ、AIO引用ソース化の最適化。Search Engine Journalの分析が示すとおり、AIO引用元になっているページは、独自の数字・引用しやすい1〜2文の要約・構造化データを備えている割合が高い。これは従来のSEOガイドラインの延長線上で十分対応可能だ。

みっつ、計測KPIの組み替え。流入CTRだけでなく、ブランド指名検索の絶対量、AI検索(ChatGPT / Perplexity)からの参照流入、メルマガ・LINE経由の直接流入を、月次で並列に見るダッシュボードを準備する。GA4には2026年に入ってからChatGPT・Gemini・Claude経由の流入を識別するためのAI Assistantチャネルが追加されており、計測の起点として活用できる。

「AIで検索流入が壊滅する」という言説は、Pewの一次データを根拠にする限り誇張だが、トレンドの方向は確かに減少だ。慌てるのではなく、自社データで構造を解剖することが、いま最も差がつく動きである。

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