「全社員にAIを配った」だけでは、利用は均等に広がらない。エクサウィザーズが2026年10月6日に発表した、法人向け生成AIサービス「exaBase AI」の利用ログ分析が、その偏りを数字で示した(PR TIMES、MarkeZineの報道は10月8日)。
調査が示した事実
対象は2026年7月1〜31日の1,371社・155,012ユーザー(外れ値を除く)。主な数字は次のとおりだ。
- 上位10%のユーザーが全メッセージの49.6%を送信している。従業員3,000人以上の企業では51.7%に上る
- 約9,946万メッセージのうち、AIエージェント関連は4.3%
- エージェントを作ったユーザーのメッセージ数は平均の3.8倍で、1メッセージあたりのトークン量は4.9倍
- 利用量の上位1%でエージェントを作成したのは17.5%。下位50%ではほとんど作成されていない
- 職種別の上位10%の占有率は44.1〜61.4%。メッセージ量はIT・システム・DX職が最多で、エージェント利用率は商品・サービス企画職が最も高い
同社はこの偏りを会社規模・上場有無・職種を問わず現れる「二極化」と位置づけている。同日、組織内にAIの使い方やエージェントを広める新機能「バディエージェント」も発表しており、調査は自社サービスの提案と地続きである点は押さえておきたい。
数字を読むときの注意
調査自体が限界を明記している。メッセージ数は利用頻度、トークン量は利用の深さの代理指標で、業務成果や生産性を直接測るものではなく、因果も言えない。また、対象は特定サービスの利用企業に限られ、他社ツールや個人契約のAI利用は含まれない。マーケティング職の数値は、筆者が確認できた範囲では公表されていない。営業職は利用量とエージェント利用率の両方が低めとされるが、マーケ部門に同じ傾向があるかは別途確かめる必要がある。
筆者の見立て:測るべきは「ログイン率」ではなく「再利用される型」
利用が少数に集中するという構図自体は、AI導入の現場で珍しくないと筆者は感じている。今回の調査の価値は、集中の中身がエージェントの作成という行為と結びついている点だ。作成者の1メッセージあたりのトークン量が4.9倍ということは、指示を作り込み、繰り返し使える形に落としているユーザーが、利用量の多くを担っている可能性を示唆する。ただし、これは相関であり、エージェントを作ったから利用が増えたのか、よく使う人がエージェントを作るのかは、このデータでは区別できない。
反対の見方もできる。上位10%への集中は「使える人だけが使えばよい」という合理的な分業かもしれず、均等化そのものを目標にするとコストだけが膨らむ。利用量を増やす施策が、そのまま成果の改善につながる保証もない。
マーケティング組織が今週できること
- AI活用のKPIを「利用者数・ログイン率」から、「業務に組み込まれた再利用可能なプロンプト・エージェントの数と利用回数」へ寄せる。広告文の下書き、レポート要約、競合調査など、頻度の高い業務から選ぶ
- 上位ユーザーの使い方を、本人の自己申告ではなくプロンプトの構造や入力データの観点で言語化し、チーム共通のテンプレートにする
- 成果との関係は自前で検証する。AI利用量の多いメンバーと少ないメンバーで、納期・修正回数・施策の成果を比べる小さな測定を1つ置く