AIが検索や購買相談の入り口になる中、そこに広告をどう組み込むかをめぐって主要プレーヤーの判断が真っ二つに割れている。
Perplexity:AI検索の広告を段階的に廃止
米AI検索エンジンのPerplexityは、2024年から試験導入していたAI回答内広告を2026年前半にかけて段階的に廃止し、「信頼性」を優先する方針へ転換したと報じられている(Ledge.aiの報道)。AIが生成する回答に広告主の意向が混ざることで、回答の中立性そのものへの疑念を招きかねないという判断があったとみられる。
LINEヤフー:対話型AIエージェント内の広告課金を拡大
対照的な動きを見せるのがLINEヤフーだ。AIエージェント「Agent i」において、ユーザーとAIの対話文脈に応じた広告配信の課金を、ディスプレイ広告は7月23日から、検索連動型ショッピング広告は8月31日からそれぞれ開始した(LINEヤフー公式発表)。広告は「AIからの回答や提案の一部として自然に溶け込む表示方式」で統合され、広告主が配信先としてAgent iを個別指定することはできない仕組みだ(Impress Watchの報道)。
Google:検索広告主をAI Maxへ強制移行
本誌が9月27日に報じた通り、Googleは9月から動的検索広告(DSA)をAI Max for Searchへ自動アップグレードし始めている。移行完了期限は当初の2026年9月から2027年2月へ再延期されたが、方向性自体は変わらず、広告主の選択肢を残さない形で自動化が進む。本誌既報の通り、独立テストではAI MaxのROASが従来型より約35%低いという結果も出ており、Googleの自動化推進と現場の精度への不安との間には明確な溝がある。
三者三様の背景にあるもの
この分岐は、収益構造の違いで説明できる部分がある。Perplexityはサブスクリプション収益への依存度を高める余地があるためAI回答の中立性を差別化要因にできるが、広告収益が事業の柱であるGoogleとLINEヤフーには、AI化後も広告収益を維持・拡大する必然性がある。日経クロストレンドは、AIエージェント経由の広告配信が「Google独占に対抗する」動きとして広がりつつあると分析しており、広告主にとっての選択肢が増える面もあると指摘する(日経クロストレンドの報道)。
一方で、AIが生成する回答に広告が「自然に溶け込む」形で組み込まれること自体への懸念も根強い。広告であることが利用者に十分に認識されないまま推奨が行われれば、ステルスマーケティング規制上の論点にもなりうる。国連もAIの広告利用が情報環境の信頼性を損なうリスクに言及しており(国連広報センターの記事)、Perplexityの判断はこうした懸念への一つの回答とも読める。
日本のマーケターが備えるべきこと
Agent iのような対話連動型広告は、日本市場でも今後他のプラットフォームに波及する可能性が高い。従来の検索連動型広告の運用知見だけでは対応しきれず、対話の「文脈」にどう自然に広告を織り込むかというクリエイティブ設計が新たに問われることになる。同時に、Perplexityの判断が示すように、AI経由の広告表示は利用者の信頼を損なうリスクと常に隣り合わせだ。Agent i経由の広告出稿を検討する際は、表示のされ方が景品表示法上の広告表示規制に抵触しないか、ガイドラインの整備状況を継続的に確認しておく必要がある。Google側では、AI Maxへの移行タイミングを見極めつつ、当面は従来型キャンペーンとの並行運用でROASの変化を検証する姿勢が現実的だろう。