Cloudflareが9月30日に公開したブログによれば、同社ネットワーク上のAIエージェントによる1日あたりのリクエストは過去1年で1,700%以上増え、2026年に初めて、インターネット通信の半分以上が人間によるものではなくなった。小売・ソフトウェア・ITサービス・金融の各業種では、1年で人間のトラフィックが最大40%減ったサイトもあるという。アクセスは増えるのに、収益につながる「人間の訪問」は減る。この歪みに対して、AI企業側から払う仕組みが複数出そろってきた。
3つの「値札」は、誰が価格を決めるかが違う
Googleの実験プログラム。 The Informationの報道をSearch Engine Journalが整理した記事によると、約100のデジタル媒体が対象で、Gemini・AI Overviews・AI Modeの回答に「大きく貢献」したコンテンツに支払われる。ただし金額の幅は極端で、数か月で1,000ドル未満の媒体がある一方、年間100万ドルを超える初期参加者もいる。小〜中規模の複数媒体では広告収益の0.1%未満にとどまり、月ごとの金額が理由なく変わるとの証言もある。「大きく貢献」の定義は公表されておらず、大手は参加を見送っているとされる。
CloudflareのPay Per UseとMonetization Gateway。 Pay Per Crawlがクローラーの取得(HTTP 200)ごとに課金するのに対し、Pay Per Useは「その後に起きたこと」、たとえばAI検索で回答に引用された場合に対価を払う仕組みだ。利用の定義と価格はAI企業側が提示し、媒体は受けるか断るかを選ぶ。Monetization Gatewayはx402プロトコルでAPIやサイトへのリクエストごとに課金する。SEJの報道では、9月30日に米国拠点アカウント限定のクローズドベータに入り、決済は0.001〜100ドルの範囲でUSDC建てとされる。
Microsoft。 SEJの比較記事によれば、2026年2月発表のMarketplaceは「提供価値」に応じた利用料を想定するが、価格の算定方法は公表されていない。
考察:サイト側に価格決定権があるのは「入口」だけ
ここからは筆者の見立てである。3モデルを並べると、価格をサイト側が握れるのはPay Per Crawlのような入口課金だけで、AIの回答に使われた「出口」の対価は、AI企業が決める構造になっている。0.1%未満という数字は、AI回答への貢献が広告収益に比べて低く見積もられうることを示唆する。ただし参加が小〜中規模に偏っており、全体像とは言い切れない。大手が見送っているのは、交渉力を温存しているからだと読める。
一方で、慎重な見方もある。入口で遮断すれば課金できるが、AI回答にも出てこなくなる。検索流入が細るなかで、遮断と露出のどちらを取るかは媒体ごとに答えが違う。ツールが整うこと自体は、すぐ収益になることを意味しない。
日本の媒体社・企業サイトが今できること
Googleのプログラム、Cloudflareのゲートウェイとも、現時点で日本での提供は確認できていない。先行する米国の条件を見ながら、次の3点を整理しておきたい。
- 機械のアクセスを把握する。 CDNやサーバーログで、検索・学習・エージェントのbot別アクセス比率を出す。
- 許可方針を決める。 robots.txtやWAFで、どのbotに何を許すかを区別して設計する。
- 対価より先に貢献を測る。 本誌が先日報じたブランド検索でのAI Overview急増のように、AI回答への露出は静かに広がっている。自社コンテンツがどこで使われているかを、まず見える化することだ。
関連して、Googleの広告テック事業をめぐる出版社の損害賠償請求も、媒体側の交渉環境を左右する材料になる。