AI検索で「引用されている」ことと「ブランド名が語られている」ことは別物だ。しかも、その差がどれほど大きいかは、調査ごとに数字が割れている。
「ゴースト引用」とは何か
出典リンクとして引用されるのに、回答文にブランド名が出ない現象を、調査各社は「ゴースト引用」と呼ぶ。ここで言う引用はリンクの表示、言及は回答文中のブランド名の登場である。
割れる数字:61.7%と約40%
Semrushの調査(6月9日)は、115のプロンプトで14か国、ChatGPT・Google AI Overviews・Gemini・AI Modeの4エンジンを調べ、ドメイン出現3,981件を分析した。結果は、引用のみで言及なしが61.7%、両方ありが13.2%、言及のみが25.1%だった。
一方、Writesonicの調査(Search Engine Land掲載)は、約1,600万件のブランド出現を30日間・7エンジンで集計し、ゴースト引用率を約40%とした。エンジン別ではPerplexity 52%、AI Mode 49%、AI Overviews 41%、ChatGPT 37%、Gemini 25%、Grok 22%、Copilot 19%と開きが大きい。
同じ現象で61.7%と約40%という差が出た理由は、公開情報からは断定できない。ただ、サンプル規模(約4,000件対約1,600万件)、対象エンジン、プロンプトの作り方、分母の取り方が異なることは確かで、筆者は単純な比較は避けるべきと考える。両社とも、AI可視性計測ツールを販売する事業者であり、第三者による検証もない点は割り引いて読みたい。
エンジンの癖:「名指す型」と「リンクする型」
Semrushは、Geminiがブランドを名指す割合は83.7%だが引用は21.4%、ChatGPTは引用が87%で言及が20.7%と報告する。Writesonicも、GeminiやCopilotは名指しが多くリンクが少ない「namer」、PerplexityやGoogle系の回答機能は逆の「citer」と整理した。つまり、ChatGPT対策とGemini対策では、見るべき指標がそもそも違う。
引用される「文章」の形:AI Mode 1,570万件の分析
もう一つの材料が、PillarbaseがSearch Engine Landに寄稿した分析だ。1年間・148業種のAI Mode引用15,699,298件のうち、47.7%が特定の段落を指すscroll-to-text形式だった。強調された段落の中央値は117語、約8割は最初の文に答えがある。また、引用の80.9%は一度しか使われていない。
こちらも販売事業者による分析で、順位との関連は「相関」にとどまり、引用される段落を書けば順位が上がるとは示されていない。言語や市場の内訳も示されておらず、日本語にそのまま当てはまる保証はない。
筆者の見立て:測るべきは「引用数」ではなく4象限
3つの調査に共通するのは、引用と言及を同じ指標で語ると実態を見誤るという点だ。実務では、次の四つに分けて測るのが妥当と考える。
- 引用あり・言及あり(理想)
- 引用のみ(ゴースト:露出はあるがブランド想起に結びつきにくい)
- 言及のみ(リンクなし:流入は期待できないが認知には効く)
- どちらもなし
今のところ、ゴースト引用がクリックや売上に与える影響を示した調査は確認できなかった。そのため「ゴースト引用は無価値」と断じることも、「出典に出るだけで十分」と見なすことも、根拠が足りない。本誌が10月25日に報じたChatGPT流入の欠落のように、計測そのものが揺らぐ局面でもあり、数字を幅で報告する姿勢が前提になる。
日本のマーケターが今週できること
- 主要クエリ20〜30本を決め、エンジン別に「引用・言及」を手作業で記録して四象限に分ける。
- 重要な主張の文に、ブランド名や自社調査名を同じ文の中で入れて書く(効果は未検証のため、A/Bで確かめる)。
- 段落は結論を先頭に置き、100語前後で完結させる。順位が上がる保証はないが、引用される段落の傾向としてPillarbaseの分析が示している(相関)。
- 社内報告では、ベンダーのレポートの数字を「実績」ではなく「参考値」として扱う。
AI検索の可視性は、まだ誰も正解の物差しを持っていない。だからこそ、定義を明示した自社の計測を小さく始めた側が、数字の読み方で先行できる。