英国のEC8社でGA4と店舗側の注文データを突き合わせたところ、あるリテーラーではクリスマス期間のウェブ注文のうちGA4が拾えたのは32%にとどまった。Search Engine Journalに寄稿したChristian Goodrich氏の監査の数字だ。GA4上では売上が「前日比68%減」に見えたが、実際の売上減は13%だった。数字の読み方を誤れば、広告予算の判断そのものが狂う。
「売上急落」の正体は、計測の欠損だった
同氏はSOZOのオーガニック検索責任者で、調査対象の8社すべてに自社(代理店)が関与していたと明記している。この前提は割り引いて読む必要があるが、公開された数値は具体的だ。
- 小売A: GA4が捉えたウェブ注文は2024年Q4で81%、2025年Q4で41%
- 小売B: 2024年Q4の94%から2025年Q4の36%へ低下。GA4は売上69%減を示したが、実際の純売上は18.5%増
- 小売C: 2025年10月28日〜12月4日、GA4上の購入がゼロ。実際の注文は2,215件
原因は一つではない。同氏は、同意バナー(Cookie同意管理ツール)の月間ページビュー上限に達するとバナーが停止し、計測が欠ける事例を挙げた。データが完全に途絶えるわけではなく一部が流れ続けるため、障害ではなく「需要の落ち込み」に見えてしまう。小売Cでは欠けた注文が後日1日分のスパイクとして「Unassigned」に流入した。
逆方向の誤差もある。小売Cでは3,365件の注文番号のうち657件で購入イベントが重複し、735件が水増しされた。四半期の合計はGA4の4,100件に対し店舗側4,501件と近く見え、問題が隠れていた。GAの公式ヘルプでも、重複排除はトランザクションIDが一意で空でないことが前提と説明されている。
広告判断への波及:ROASが4.79にも7.93にもなる
最も実務に響くのは広告費の評価だ。小売AではGA4上のGoogle広告ROASが8.07から4.79へ悪化して見えた。一方、店舗の注文に紐づけたマルチタッチ分析では4.42から7.93へ上昇し、しかも広告費は20%少なかったという。同じ期間で「悪化」と「改善」が逆転する。
これはSmart Bidding ExplorationやP-MAXの目標ROAS設計にも直結する。自動入札はGA4やコンバージョンタグが返す値を学習材料にするため、入力が欠けていれば最適化も歪む。筆者の見立てでは、年末商戦前に入札戦略をいじる前に、計測の健全性を確認する方が順序として正しい。
日本のEC担当者が読み替えるべき点
この調査は英国の事例であり、日本にそのまま当てはまる証拠はない。サンプルは8社で、代理店自身による監査という限界もある。ただ、同意管理ツールの従量上限、重複購入イベント、ボットによるセッション急増(小売Dでは通常300〜900だった日次セッションが2万件超に跳ね上がった)といった仕組みは、日本のサイトでも起こり得る構造だ。日本では外部送信規律への対応で同意管理ツールを導入したサイトが増えており、「プランの上限」という落とし穴は他人事ではない。この点は筆者の推測であり、自社環境の確認が必要だ。
ブラックフライデー前にやる3つの点検
同氏の提案を、実務の手順に落とすとこうなる。
- 捕捉率を出す: 週次で「GA4の購入(distinct transaction ID)÷自社の注文数」を算出。急変した週、ほぼゼロの週、100%超の週を洗い出す
- 同意ツールを監視する: 月間上限と稼働状況をマーケ側でも見られるようにし、警告をマーケにも届ける
- 売上の正をECカートに置く: 注文・売上はカートの値を基準とし、GA4は行動分析と傾向把握に使う。購入計測のサーバーサイド化は、年末商戦中に既存プロパティを触らず、別プロパティで検証する案が示されている
「GA4の数字が落ちた」と気づいたとき、需要が落ちたのか、計測が落ちたのか。それを切り分ける指標を持っているかどうかが、年末商戦の判断の質を決める。