2026年11月7日(土)
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Amazonで売っていない広告主が48%増えた——Prime Video広告の成長は「カートに入らない商材」が牽引している

9月3日のAmazon Japan Upfront 2026で、Prime Video広告の平均キャンペーン支出が半年比45%増、Amazon.co.jpで販売しない広告主が48%増と発表された。牽引役は通信140%増、旅行83%増、金融サービス69%増。いずれもAmazonに商品棚を持たない業種だ。一方で新フォーマットは「リモコンでカートに追加」を強化する方向に並ぶ。この数字と製品戦略のねじれが何を意味するのかを、同時期の運用型テレビCMの動きと並べて読む。

WebTech Journal 編集部

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Amazon Adsが9月3日の年次イベント「Amazon Japan Upfront 2026」で示した数字には、素直に読むと矛盾がある。伸びているのは「Amazonで物を売っていない広告主」であり、投入される新フォーマットは「Amazonで物を買わせる機能」なのだ。このねじれは、日本のCTV予算がどこから流れてきているのかを示している。

発表された数字

Amazon Japanの発表によれば、Prime Video広告が始まった2025年4月以降、全広告主の平均キャンペーン支出額は、最初の6カ月間(2025年4月〜9月)と後半の6カ月間(2025年10月〜2026年3月)を比べて45%増加した。同じ期間比較で、Amazon.co.jpで商品を販売していない広告主が48%増加している。

内訳として示された伸び率は、通信140%増、旅行83%増、金融サービス69%増。3業種いずれも、Amazonのカートに商品を入れて完結する取引ではない。携帯回線も、航空券やホテルも、証券口座もクレジットカードも、Amazon.co.jpの商品ページを持たない。

なおMarkeZineは9月1日のメディアラウンドテーブル取材として、Prime Video視聴者は広告接触後の購買意向が38%高く、Prime Video世帯の89%が直近1カ月にAmazonで購入経験を持つ、という数字も報じている。これらはいずれもAmazon自身が公表した自社データであり、第三者検証を経たものではない点は差し引いて読む必要がある。

新フォーマットは「買わせる」方向に並んでいる

発表された新フォーマットは3つ。

ロケーションベースのインタラクティブ動画広告(2026年第4四半期提供開始予定)は、地理的シグナルを使って視聴者を近隣の実店舗——自動車ディーラー、飲食、小売など——へ誘導する。ポーズ広告(同)は、視聴者がコンテンツを一時停止した瞬間に半透明のクリエイティブをオーバーレイ表示し、リモコンのワンクリックでAmazonのカートに商品を追加できる。ネクストアップ広告(2027年第1四半期提供開始予定)は、エピソードの切り替わりという期待感の高い瞬間に露出する枠だ。

既に日本で提供中のインタラクティブ動画広告(IVA)についても、米国での実績としてブランド検索が平均6倍、商品詳細ページ閲覧が4倍、カート追加が4倍、購入率が5倍という数字が示された。ポーズ広告については米国で商品購入率13%のリフトが報告されている。いずれも米国の実績であり、日本での成果ではない。この区別は、社内提案に引用する際に落としてはならない。

交差分析:これはリテールメディアなのか、テレビ広告なのか

リテールメディアという言葉は、本来「小売の購買データを使って、その小売で売る商品の広告を出す」仕組みを指してきた。棚を持つメーカーが、棚のあるプラットフォームで広告を買う。閉じたループであることが強みだった。

ところがPrime Video広告の成長は、そのループの外側から来ている。通信・旅行・金融は、Amazonの購買データで「この人はこの商品を買った」を測れない業種だ。彼らがPrime Videoを買う理由は、リテールメディアの精度ではなく、認証済みIDに紐づいた到達——つまり、テレビの代替である。

そう考えると、この成長の原資はデジタル広告予算ではなくテレビ予算だと見るのが自然だ。実際、同じ週には別の側からも同じ現象が起きている。Hakuhodo DY ONEは9月3日、運用型テレビCM「WISE Ads for TV」の配信対象局に読売テレビと中京テレビを追加し、10月1日以降の放送枠から関東・関西・中京の約7000万人へリーチ可能になったと発表した。日次でパフォーマンスを可視化し、番組・時間帯・クリエイティブ別に効果検証する——完全にデジタル運用の作法である。

つまり、テレビの側が運用型に近づき、ストリーミングの側がテレビ的な業種を取り込んでいる。両者は同じ予算プールに向かって、逆方向から歩いている。日本のCTVの主戦場は「Amazonで買わせる広告」ではなく、「テレビ予算をどちらが取るか」に移りつつある。

新フォーマットが購買導線を強化しているのは、この見立てと矛盾しない。むしろ、テレビ予算を取りに行くうえでAmazonが差別化できる唯一の武器が「その場でカートに入る」体験だから、そこに投資が集中していると読める。ロケーションベースの店舗送客が加わったのは、カートに入らない商材に対する回答だ。

反論として考えておくべきこと

45%・48%という数字は、2025年4月にサービスが始まった直後の6カ月を分母にしている。立ち上がり期の低い基数からの伸び率であり、そのまま次の1年に外挿できるものではない。

また「Amazonで販売していない広告主が48%増」は広告主数の増加であって、支出額に占める比率ではない。単価の低いテスト出稿が大量に増えただけでも、この数字は動く。実額のシェアが開示されていない以上、「Prime Video広告の主役が非物販に移った」とまでは言えない。

本誌が9月6日に報じたYouTubeの酒類広告に「個人化」が解禁される件もそうだが、動画広告面のターゲティング精度をめぐる各社の発表は、都合のよい切り口の指標で語られやすい。分母と期間を確認する習慣が、いま最も費用対効果の高いリテラシーだ。

実務の次の一手

物販を持たない業種の広告主にとって、Prime Video広告は「Amazonで売っていないから対象外」という前提が崩れた。第4四半期にロケーションベースのフォーマットが出るなら、店舗を持つ自動車・飲食・小売・金融の来店型ビジネスは、テスト設計を今から組む価値がある。

物販を持つブランドにとっては逆に、非物販の広告主が入ってくることで面の競争が激化する。これまで「Amazonで売っている」ことが実質的な参入障壁だった枠に、テレビ予算を持つ大型広告主が入ってくる。単価の前提は変わると考えたほうがいい。

測るべき指標も変わる。カートに入らない商材でPrime Videoを買うなら、KPIはAmazon内の指標ではなく、自社サイトの指名検索・直接流入・来店計測になる。Amazonの管理画面の外に効果測定を持てるかどうかが、この面を使いこなせるかの分かれ目になる。

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