ChatGPTの広告をクリックすると、広告主のサイトではなく「広告主のAIエージェント」との会話が始まる。この試験が米国で進んでいる。着地点がLPから会話へ移るなら、運用者の宿題は広告文ではなく、エージェントに渡す情報の整備になる。
確認できた事実:Sponsored Agentの試験
Search Engine Roundtableの報道(9月16日)によると、OpenAIは広告クリック後に事業者のエージェントとの会話を始められる新形式を、米国の一部広告主・一部ユーザーで試験している。会話は表示ラベル付きで、ChatGPT本来の回答や元の会話とは分離される。ContentGripによれば、Wayfairが限定的な規模で参加を認め、商品情報の正確性や顧客サポートへの引き継ぎに配慮して検証しているという。ただし性能指標や価格は公表されておらず、商業的な価値はまだ未知数だ。
設定の仕組みは、8月に発見された段階のMarTechの記事が詳しい。サイトをクロールして事業プロフィールを自動生成し、広告主のカスタム指示、商品フィード、MCPツール、リード獲得フォームを組み合わせてエージェントを作るとされる。同記事の「会話が目的地になる」という見立ては、ここに集約される。
周辺の動き:ビジュアル広告と計測の拡張
Web担当者Forumの報道によれば、OpenAIは10月5日に画像生成中に表示するビジュアル広告形式を発表した。こちらも米国の一部広告主での試験だ。あわせて計測パートナーが拡大し、Hightouch・Tealium・LiveRampがコンバージョンデータの連携を、AppsFlyer・Triple Whale・Adjustがコンバージョンやクリック計測の仕組みを提供する。Adweekは、OpenAIの説明として10万社超の広告主がChatGPTでキャンペーンを実施したと伝えている。
日本はどこにいるのか
日本では6月19日からパイロット広告が始まっている。Impress Watchによると、対象はログイン済みの成人のFree・Goプラン利用者で、電通デジタルとHakuhodo DY ONEが販売パートナーだ。広告主はチャット履歴や個人情報にアクセスできず、インプレッションやクリックの集計データだけを受け取る。博報堂DYONEの発表も同様の枠組みを示す。
私が確認した範囲では、Sponsored Agentやビジュアル形式の日本提供は発表されていない。米国での試験からパイロットの形式が広がる時期は不明だが、日本の広告が既に始まっている以上、新形式が追随する可能性は考えておくべきだろう(筆者の推測)。
考察:会話が着地点になると、何が変わるか
第一に、LPの役割が分解される。FAQ、価格、在庫、導入事例がエージェントの回答材料になるため、サイトは「見せる場」から「読ませる場」に変わる。第二に、計測が難しくなる。広告主が受け取るのが集計値に限られる以上、会話内でのやり取りがCVにどう寄与したかは、フォームやCRM側の設計で補う必要がある。本誌が10月25日に報じた通り、AI経由の流入はUTMが落ちてDirectに紛れやすく、実績を幅で報告する姿勢が要る。
反対意見もある。会話に誘導しても、最終的な購入判断はサイトで行われる可能性が高く、エージェント広告が従来のLPを置き換えるとは限らない。実績データが出ていない今は、過剰な期待も禁物だ。
今から準備できる4点
- 自社サイトのFAQ・料金・返品条件を一箇所に整理し、機械が読みやすい形にしておく。
- 商品フィードの品質(属性、在庫、価格)を点検する。
- 有人対応への引き継ぎ条件(どの質問で人に渡すか)を決めておく。
- 会話経由のリードを識別するため、フォームやCRMに流入元の項目を用意する。
広告が会話になるほど、勝敗は入札ではなく、サイトと社内の情報の整い方で決まる。
出典
- OpenAI Testing Sponsored Agents For ChatGPT Ads (Search Engine Roundtable)
- OpenAI tests ChatGPT ads that open branded AI conversations (ContentGrip)
- OpenAI ad experiment could change what happens after the click (MarTech)
- OpenAIがChatGPTに新たなビジュアル広告フォーマットを導入 (Web担当者Forum)
- ChatGPT広告 日本でパイロット開始 (Impress Watch)
- 博報堂DYONE ChatGPT広告パイロット取扱開始 (博報堂DYホールディングス)