AI経由の流入は、どれほどの規模なのか。この問いに対して、ここ数日で性格の異なる3つのデータが出そろった。結論から言えば、「小さい」と「測れない」は別の問題であり、混同すると判断を誤る。
数字その1:ChatGPT流入はGoogleオーガニックの0.62%
マリー・ヘインズ氏は、規模の異なる100サイトの12か月分のGA4データ(合計1億4,500万セッション超)を分析した。Search Engine Landの報道および氏本人の記事によると、ChatGPTのセッション数はGoogleオーガニックの0.62%、他のLLMを含めても0.73%にとどまる。
ただし、コンバージョンを計測していた55サイトに限ると見え方は変わる。コンバージョン率はChatGPT経由が13.8%、Googleオーガニックが3.02%。訪問者の質は約4.5倍高い。それでも、コンバージョン件数の合計はGoogleオーガニックが全LLM合計の27倍だった。
留意点もある。氏自身が小規模なデータセットだと認めており、LLM由来セッションの識別方法は示されていない。100サイトのうち45サイトはキーイベント自体を計測していなかった。
数字その2:北米パブリッシャーの検索比率は21%から12%へ
一方、メディア側のデータは別の風景を見せる。Search Engine Journalの報道によれば、Chartbeatの調査で北米の検索経由ページビュー比率は2025年第3四半期の21%から2026年第3四半期に12%へ低下した。
ここで注意したいのは、Chartbeat自身の2026年第3四半期レポートでは、北米の検索流入は前期から変化なしとされ、ネットワーク全体のトラフィックも「安定」と記されている点だ。つまり下落の多くは1年前との比較で起きており、原因も明示されていない。Chartbeatの「検索」はBingなども含む集計で、Google固有の動きかどうかも判別できない。AIが原因だと断定できる材料は、この数字単体にはない。
数字その3:「AIは直接流入に隠れている」仮説は検証できなかった
AI経由の訪問が「Direct」に紛れているという説は、広く語られてきた。ケビン・インディグ氏がSearch Engine Landに寄せた検証は、これに水を差す。
GA4の12サイト(2026年1〜9月、トップページ等を除外)では、直接流入の総数は140.9%増えたが、エンゲージした直接流入は月次で1.0%減。増加分の大半はボットで、あるサイトではDirect 40万9,000セッションのうちエンゲージしたのは198件だった。AIの痕跡を持つ直接セッションは平均0.003%。4ブランドの相関分析(632回の検定)でも、AI露出とその後のブランド検索・Directの信頼できる関連は見つからなかった。
一方で、同記事が紹介するRampの事例では、成長担当者の推定で直接流入の30〜40%がAI回答由来とされ、自己申告の経路でも確認されたという。検証が否定的な結果だったことは、効果がないことの証明ではない。自社の計測が及ぶ範囲では見えない、というだけかもしれない。
3つを重ねて見えること(筆者の考察)
3つの調査は、サイト群・期間・指標が異なり、直接比較はできない。そのうえで言えるのは次の点だ。
第一に、少なくとも現時点の公開データでは、AIのクリック流入がGoogleを代替する規模には達していない。第二に、質は高いが量が小さいため、売上への寄与で判断するなら優先順位はGoogle検索の維持が先になる。第三に、直接流入の増加をそのままAIの成果と読むのは危険だ。本誌が先日取り上げたChatGPT流入のUTM欠落も、Search Engine Landは後に「バグだった」と報じている。計測の不安定さが、数字の解釈をさらに難しくしている。
日本については、同種の公開データを筆者は確認できていない。海外の数字をそのまま当てはめず、自社データで検証するのが現実的だ。
今日からできる確認
自社のGA4で次の3点を確認したい。ChatGPT等のリファラー流入が、Googleオーガニックの何%か。それぞれのコンバージョン率と件数。Directのうちエンゲージしたセッションの推移(ボットの混入を疑う)。加えて、問い合わせフォームに「何で知りましたか」の自由記述を加えると、クリックの届かない影響を拾える。インディグ氏が推奨するのは、AI上での露出、顧客の自己申告、商業成果の3つを同じ月次レポートに載せることだ。クリックだけで語る時代は、すでに終わりつつある。