GEOの施策リストは増える一方だが、どれが引用に効くのかは長く「感覚」の領域だった。10月22日、SISTRIXが引用される側のページの特徴を9.6万URLで比較した調査を公開した。同じ日、SparkToroのRand Fishkin氏はAI可視性への投資に慎重な見方を示した。この2つは対立しているようで、実は別の問いに答えている。
SISTRIX調査が示した「相関」の地図
調査は、SISTRIXのAI Index(DACH地域、2026年第2四半期)から、ChatGPT・AIモード・AI Overviewsの引用URL計48,527件を抽出し、同一ドメイン内の非引用ページと比較したものだ。分析対象は17,380ドメイン・計96,418URL、各43項目。結果は「引用される確率が何倍違うか」を示すオッズ比で示される(1.0が差なし)。
- 目次(TOC)があるページ:1.7。ただしTOCを持つページは全体の14%しかない
- 最新の年号を含むタイトル:2.7(調査者自身が「初期的な示唆」と留保。古い年号のみは0.7)
- H2が5つ以上:1.6、Articleスキーマ:1.6、FAQPageスキーマ:1.5、見出し行つきの表:1.5
- 著者ボックス(写真つき):1.4、画面上の最終更新日:1.3(実装率は5%)
- llms.txt:効果なし。 引用URLの11.7%がllms.txt設置ドメインにあるが、全ドメイン平均は14.0%だった
- Productスキーマ:0.8(AI Overviewsでは0.5)
複数の項目を満たしたページは、ほとんど最適化していないページの2.1倍引用されやすかった。ただし多数を満たすのは引用ページの10%に過ぎない。プラットフォーム差もあり、ChatGPTは質問形のタイトル(1.9)や表(1.8)、AIモードは目次とH2の多さ(各1.8)、AI OverviewsはArticleスキーマ(2.0)が目立つ。
数字の読み方——規模の小さい検証は符号さえ揺れる
この調査で最も示唆的なのは、方法論の自己検証だ。FAQスキーマの効果は、833URLで見るとマイナス23%、4,600URLでプラス31%、96,418URLでプラス19%と符号さえ揺れた。著者らは約5,000URL未満の調査は信頼しにくいと結論している。「当社の検証で〜」という小規模な報告は、同じ罠を踏んでいる可能性がある。
限界もある。結果は相関であって因果ではなく、データはDACH圏のみ、Perplexity・Claude・Geminiチャットは含まれない。ドイツ語圏のデータが日本語の検索にそのまま当てはまる保証はない。
Fishkin氏の「流入は誤差」論と、どう両立するか
Fishkin氏は、直近の3つの調査を引いてAIアシスタントの送客の小ささを論じた。Marie Haynes氏の100サイト12か月分の分析ではChatGPTは全流入の0.62%、LLM合計でも0.73%でDuckDuckGoを下回り、CVの97%はGoogle経由だった。Kevin Indig氏の12サイト検証では、AI可視性と指名検索・直接流入の増加に確実な相関は見つからなかった。Fishkin氏の結論は、AIを「デジタルの看板」と捉えてブランド施策として測れ、というものだ。これらの数字は本誌のChatGPT流入の記事でも整理した。ただしFishkin氏の論は新しい独自データではなく他者の調査の論評で、Indig氏の標本も小さい点には留意したい。
筆者の考えでは、2つの調査は次のように統合できる。SISTRIXが示したのは「引用されやすい作り」で、その多くは目次、更新日、見出し設計、著者情報といった、AI以前から良い記事の条件だった。Fishkin氏が問うたのは「引用を追うために予算を動かす価値」だ。前者のコストは低く、後者の見返りは不確実。ならば、新規予算を付けず、既存記事の改善で吸収するのが合理的な配分になる。
日本の実務者が今週できること
- llms.txtの優先度を下げる。 今回のデータでは差が見えなかった。
- 更新日の表示と目次を整える。 実装率が低い(5%、14%)ため差別化になりうる。ただし日付だけ書き換えて中身を更新しないのは避ける。
- スキーマは「付ければ効く」と考えない。 Articleに効果は見えたが、他の多くは1.0前後だった。実際の質問に答える内容があるときだけ使う。
- 成果指標を「流入」から切り離す。 引用の有無は自社記事のプロンプト別定点観測、効果は指名検索やアンケートで見る。
年号入りタイトルの2.7倍は魅力的だが、調査者自身が初期的としている。毎年タイトルを書き換える運用コストと見合うかは、自社の更新体制で判断したい。