2026年9月20日(日)
データ分析

Googleアナリティクスに「ダッシュボード」が来た——15枚上限・セグメント非対応・全員に共有、の3つが使いどころを決める

9月9日、Googleアナリティクスにレポートタイプ「ダッシュボード」が追加された。告知はリリースノートの一段落だけで、ブログもプレスリリースもない。ドラッグ&ドロップの6種類のチャートより読むべきは、ドキュメントに書かれた3つの制限だ。15枚(プレミアムは30枚)の上限、プロパティ全体への強制共有、API・セグメント・カード単位比較の非対応。Data Studioを置き換えるものではない理由と、現実的な使い分けを整理する。

WebTech Journal 編集部

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9月9日、Googleアナリティクスに「ダッシュボード」というレポートタイプが追加された。告知はブログでもプレスリリースでもなく、「Googleアナリティクスの新機能」ヘルプページに載った一段落だけだ。リリースノートには、ダッシュボードはビジネスがKPIを1つのレポートで確認するための柔軟な方法である、と書かれている。

派手さのない告知だが、この機能で本当に読むべきなのは、追加された機能のほうではない。ドキュメントの「制限事項」のほうだ。

できること

ダッシュボードはグリッド上のキャンバスで、ディメンションと指標をドラッグして配置する。レポートの定義を先に作る必要がない点が、従来のカスタムレポートと大きく違う。カードの配置・リサイズ・整列は手動で、右側のパネルで選択中のビジュアライゼーションの書式を設定する。

用意されているチャートは6種類だ。スコアカード(期間比較を適用すると増減率を表示)、テーブル、折れ線(日次・週次・月次)、棒グラフ、ドーナツ、そしてファネルチャート。ファネルが標準の「レポート」セクションに入ったことで、これまで探索(Explore)でしか描けなかったコンバージョンの離脱可視化が、通常レポート側でも扱えるようになった。地味だが、これは日常の共有コストを下げる変更だ。

保存時にレポートの左ナビゲーションへ直接公開される点も従来と異なる。GA4移行後もカスタムレポートの配置を管理してきた「ライブラリ」を経由しない。作成・公開には編集者または管理者権限が必要で、閲覧はプロパティにアクセスできる全員が可能だ。

制限事項の3つが、使いどころを決める

ドキュメントに明記された制約は3つある。

1つ目は枚数。 標準プロパティは1ダッシュボードあたり最大15枚、プレミアム(アナリティクス360)は最大30枚。移行できるレポートの分量が契約プランで決まる構造になっている。

2つ目は共有範囲。 公開したダッシュボードはプロパティ全体に共有される。個人用・非公開のダッシュボードという概念がない。1つのプロパティを複数チームや複数の担当者で共有している運用では、初日から命名規則の統制が必要になる。左ナビゲーションが、その散らかりを引き受ける場所になるからだ。

3つ目は範囲。 API、セグメント、カード単位の比較がいずれも非対応。この3つの欠落が、それぞれ別の使い方を潰している。API非対応は、ダッシュボードをプログラムから読み書き・複製できないことを意味する。複数プロパティに同じ月次レポートを展開したい代理店にとっては効き方が大きい。セグメント非対応は分析者にとってより重い。セグメントは探索でコホートを切り出す仕組みそのもので、それがない以上、ダッシュボードは各チャートに置いたディメンションでしか絞り込めないプロパティ全体の合計を描くことになる。

8月に予告されたものと、9月に出たものは違う

ドキュメントを読み比べると、もう1点気づくことがある。2026年8月10日、GoogleはGoogle広告とGoogleアナリティクスに、テキストプロンプトから生成するダッシュボード、インサイトカード、ピアベンチマークを追加すると発表し、アナリティクスのダッシュボードは「近日提供」とされていた。この発表では4つの機能すべてがGeminiによるものと説明されている。

だが9月9日のリリースノートと付随するヘルプ記事には、Geminiへの言及も、自動生成されるサマリーも、文章から図を作る機能の記述も見当たらない。両方の文書が説明しているのは、フィールドをドラッグして操作する手動ビルダーだ。8月の予告を機能を削って出したのか、別物なのか、生成レイヤーを後から足すのかは、どちらの文書にも書かれていない。過去のAIレポート機能(Ads Advisor、Analytics Advisor、Ask Advisor)が英語限定で提供されてきた経緯を踏まえると、手動ビルダーとして先に出したことには合理性がある、という読み方もできる。日本語環境でも初日から同じものが使えるからだ。

Data Studioを置き換えるものではない

比較対象は明らかだ。Googleが2026年4月11日にLooker Studioから名称を戻したData Studioは、36種類のチャートと600を超えるパートナーコネクタを持つ。散布図、地図、ツリーマップ、ゲージ、ウォーターフォールは今回の6種類に含まれない。ピボットテーブルも探索側の機能のままだ。

15枚・6種類・セグメントなし・APIなしのダッシュボードが、Data Studioで作っている月次レポートを置き換えることはない。ただ、3枚のチャートで片づく質問のために別のプロダクトを開かせない価値はある。社内で毎週見るKPI面は、実際その規模で足りることが多い。置き換えではなく、レポートの階層を1段増やす機能として設計するのが現実的だ。

今週できること

  • 社内共通で毎週見るKPIを15枚以内に絞り、それをダッシュボード化する。入りきらないものは、そもそも毎週見る必要があるかを疑う
  • 命名規則を先に決める。公開が全員に見える以上、後から直すコストが高い
  • クライアント向けレポートと、セグメントが必須の分析はData Studioと探索に残す。移行を全面でやらない

レポート面が増えることの本当の効果は、機能の数ではなく「どの質問が日常的に問われるようになるか」に出る。15枚に何を置くかは、そのチームが何を見ている組織なのかの宣言になる。

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