2026年9月20日(日)
SEO

Googleが「検索体験は地域で違う」を公式ドキュメント化した——一覧に日本の名前は一度も出てこない

9月8日、GoogleがDMA対応で欧州の検索結果を刷新し、自ら「29年の検索史で最大のサービス品質低下」と表現した。同じ日、Google検索セントラルに「Regional differences in Search experience」という新ドキュメントが追加されている。並んだ7機能の対象地域はEEA・トルコ・南アフリカのみで、日本は一度も出てこない。構造化データのカルーセルまで地域限定になったことが、日本のSEO実務に何を意味するかを読む。

WebTech Journal 編集部

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「29年で最大の品質低下」を、Google自身が言った

9月8日、Googleは欧州でDMA(デジタル市場法)対応の検索結果刷新をロールアウトした。Reutersの取材にGoogle関係者はこう述べている——変更は「世界で最も利用されている検索エンジンの29年の検索史において、最大のサービス品質低下」を意味する、と。

刷新後の画面はこうなる。専門検索エンジン(VSS=バーティカル検索サービス)が1つページ上部に置かれ、その下に詳細を減らした2つが続く。さらにその下にホテル・航空会社・レストランのカルーセルが並ぶが、リアルタイム価格のような主要な情報は取り除かれる。順位はGoogleのアルゴリズムが決める。

Googleは2024年に同様の仕様をテストしたときの結果を公表していた。ユーザーの満足度は測定可能なレベルで下がり、ホテルを見つけるまでの時間が延び、検索回数が増え、そのまま諦める人も増えた。ホテル自身のサイトへのトラフィックは10%超減少し、仲介サイトへのトラフィックはほぼ横ばいだった。欧州委員会はこのデータを採らなかった。

Search Engine Roundtableのバリー・シュワルツは、この主張に皮肉を添えている。Googleはここで「サイトへのトラフィック」と「検索回数の増加」を品質の指標にしているが、AI OverviewsとAI Modeはまさにその両方を悪化させている、と。妥当な指摘だ。品質の定義は、Googleにとって都合のよい方向に動く。

同じ日に出た、もう1つのドキュメント

見落とされているのは、Googleが同じ日にGoogle検索セントラルへ追加した新ドキュメントのほうだ。タイトルは「Regional differences in Search experience(検索体験における地域差)」。Googleはこれを「パブリッシャー、事業者、アグリゲーターが、地域ごとに利用可能な検索機能と、その参加要件を理解できるようにするため」のものだと説明している。

掲載されている機能は7つ。整理するとこうなる。

| 機能 | 対象地域 | 対象クエリ | |---|---|---| | Aggregator unit | EEA | ホテル、航空券、地上交通、商品 | | Supplier unit | EEA | ホテル、航空券、地上交通、商品 | | Ecosystem carousel | EEA | 天気、スポーツ、金融、翻訳 | | Job sites features | EEA | 求人 | | Places sites features | トルコ | ホテル、ローカルビジネス | | South Africa badge / refinement chip | 南アフリカ | 旅行、商品、レンタカー、フードデリバリー、地上交通 | | Structured data carousels | EEA/南アフリカ/トルコ | ホテル、ローカルビジネス、商品ほか |

EEA、トルコ、南アフリカ。日本は一度も出てこない。

「構造化データを入れればカルーセルが出る」は、日本では成立しない

この表で日本のSEO担当者がいちばん影響を受けるのは、最下段のStructured data carousels(ホストカルーセル)だ。

これは「サイト内の複数エンティティを横スクロールで見せるリッチリザルト」であり、Googleのドキュメントは対象地域をEEA・南アフリカ・トルコと明記している。実装要件として構造化データマークアップが必要だとも書かれている。

つまり、ホストカルーセル用の構造化データを日本のサイトに実装しても、日本の検索結果には出ない。海外のSEOブログやカンファレンスで「ItemListでホストカルーセルを狙え」という話を読んで持ち帰った施策は、日本市場では空振りになる。工数をかけた分だけ損をする。

これまでも検索機能に地域差があること自体は知られていた。ただしそれは「まだ日本に来ていない」という時間差の話として理解されてきた。今回のドキュメントが変えたのは、Googleが地域差を恒久的な仕様として公式に体系化した点だと筆者は見る。EEA向け機能はDMAという法規制への対応であり、法律が変わらない限り日本に展開される理由がない。トルコと南アフリカの機能も、それぞれの競争当局対応の産物と考えるのが自然だ。時間が経てば日本にも来る、という前提はここで一度捨てたほうがいい。

日本のマーケターが今のうちにできること

ここから先は推測を含む。だが、いくつかは今から動かせる。

1つめ。海外SEO情報の「地域チェック」を工程に入れる。 海外発の施策を検討するとき、まずこのドキュメントで対象地域を確認する。EEA限定と書かれていれば、日本では検討対象から外す。それだけで無駄な実装が減る。

2つめ。構造化データの棚卸しをする。 すでにホストカルーセル狙いのマークアップを入れているなら、それが日本で機能していないことを前提に効果測定を組み直す。構造化データ自体はAI検索側の理解を助ける側面があるため即撤去すべきとは言わないが、「カルーセルが出るはず」という前提のKPIは外すべきだ。

3つめ。日本にDMA型の規制が来る場合のシナリオを持っておく。 日本ではスマートフォン特定ソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)の運用が始まっている。検索結果の自社優遇そのものを欧州と同じ形で規制する枠組みではないが、プラットフォーム側の対応が日本でも検索画面の形を変える可能性はゼロではない。もし同種の変更が来るなら、欧州で起きたこと——比較サイトと仲介サイトが上に出て、事業者の直販サイトへの流入が減る——が先行事例になる。ホテル、航空、飲食、EC。自社が「仲介される側」なら、欧州の10%超という数字は他人事ではない。

一方で、日本に載っていないことは悪い話ばかりではない

反対の見方も置いておきたい。Google自身が「29年で最大の品質低下」と呼ぶ変更が、日本の検索結果には適用されていない。欧州の事業者が直販トラフィックを削られている間、日本の事業者は少なくともその影響を受けていない。

ただしこれは、日本市場の検索体験がGoogleの製品判断だけで決まっているということでもある。規制が検索結果の形を変える欧州と、Googleの裁量だけが検索結果の形を変える日本。どちらが事業者にとって予測可能かは、簡単には言えない。

本誌が先日報じたGoogleは欧州でパラサイトSEOの罰を消したのではない——「別ドメイン扱い」に差し替えただけだも、同じ「欧州だけ仕様が違う」問題の一角だった。地域差はもう例外ではなく、前提になっている。海外の一次情報を読むときは、必ず「どの地域の話か」から確認する癖をつけたい。

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