2026年9月20日(日)
SEO

Googleは欧州でパラサイトSEOの罰を消したのではない——「別ドメイン扱い」に差し替えただけだ

8月28日、Googleがサイトの評判に関するポリシーを改定し、8月30日からEEA内の検索結果に手動対策の効果を反映しないことにした。DMA圧力への全面的な譲歩と読まれがちだが、公式のスパムポリシー文書を開くと、EEA内では該当ページが「メインドメインから切り離され、独立にランキングされる」と明記されている。罰則の撤回ではなく執行手段の差し替えだ。そして日本は、依然として手動対策が効く側にいる。

WebTech Journal 編集部

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Googleが欧州でパラサイトSEOを見逃すことにした——8月末の発表は、そう要約されて流通している。だが公式ドキュメントの本文を読むと、話は逆に近い。手動対策という「見せしめ型」の執行が、より構造的な仕組みに置き換わっただけだ。しかもその仕組みは、手動対策より解除が難しい可能性がある。

何が発表されたのか

Googleは8月28日、検索セントラルブログでサイトの評判に関するポリシーの更新を発表した。Web担当者Forumの報道によれば、欧州経済領域(EEA)内の検索結果において、このポリシーに基づく手動対策の反映を8月30日から停止する。EEA外のユーザーに対しては手動対策を継続するため、同じサイトでも検索するユーザーの所在地によって結果が変わることになる。EEA内でも、サイト所有者にはSearch Console上で手動対策の通知が届き、再審査リクエストも送信できる。

背景にはEUの「デジタル市場法(DMA)」がある。欧州委員会がこのポリシーの運用を調査対象としており、Googleは委員会と調整のうえでEEA内の適用基準を変更した、と説明されている。

公式ドキュメントに書かれた「切り離し」

ここまでなら「欧州では罰されない」という理解でも大きくは外れない。だが、Googleのウェブ検索スパムポリシー文書を実際に開くと、EEA内の扱いについて別のことが書かれている。

EEA外では、ポリシーに反すると判断されたページは、EEA外のユーザーに表示される検索結果において手動対策の対象になりうる。一方、EEA内のユーザーに表示される検索結果では、該当ページは手動対策の影響を受けない代わりに、メインドメインとは別のものとして分類されうる。文書はその狙いを、サイトの各部分が「それぞれの実力で」独立してランキングされるようにするためだと説明し、具体例として「カジノ関連コンテンツはカジノ関連コンテンツと競う」ことでユーザーが最良の結果を得られる、と述べている。

もうひとつ、細かいが示唆的な変更がある。現在の文書中で当該セクションの見出しは「Site reputation policy」であり、長らく使われてきた「abuse(不正使用)」の語が外れている。違反者を罰するポリシーから、コンテンツを適切な競争相手と比較するための分類ルールへと、位置づけの言い換えが行われている。

交差分析:どちらが厳しいのか

手動対策と「別ドメイン扱い」を並べると、性質がまるで違う。

手動対策は人手による審査に基づく処分であり、Search Consoleに通知が来て、修正すれば再審査で解除できる。つまり可逆的で、担当者の目という有限のリソースに律速される。実際、パラサイトSEOへの手動対策が全世界のあらゆる該当サイトに行き渡っていたわけではない。

対して「メインドメインから切り離して独立にランキングする」処理は、システム側の分類である。ホストの権威を借りるという行為の前提そのものを無効化する。カジノ記事が大手メディアのドメインに置かれていても、カジノ記事同士の土俵で戦わされるのなら、そもそもホストに寄稿する経済合理性が消える。

したがって筆者は、この変更を「欧州の緩和」と読むのは誤りだと考える。むしろGoogleは、DMAという外圧を口実に、恣意性を批判されやすい手動対策から、説明しやすくスケールする自動分類へと執行手段を移す実験をEEAで行っている、と見るほうが整合的だ。EEAで運用が安定すれば、同じ仕組みが他地域に降りてくる可能性は十分にある。

もちろん反対の見方もある。切り離しの判定精度が低ければ、正当な第三者コンテンツ(外部ライターの寄稿、専門家監修コーナー、ユーザー投稿型のQ&A)まで巻き添えで隔離されかねない。手動対策なら人の目が入るぶん誤爆は限定的だった、という主張には一理ある。EEAの事業者にとっては、通知は来るが順位への影響は説明されにくいという、厄介な状態が当面続く。

日本のサイトに何が残るか

重要なのは、この変更が地域限定だという点だ。日本にDMAに相当する法律はない。特定デジタルプラットフォーム透明化法は取引条件の開示を求める枠組みであり、検索順位の付け方そのものに介入する構造にはなっていない。したがって日本のユーザーに表示される検索結果では、従来どおり手動対策が効く。

本誌は9月2日にGoogleの検索ログに値札がついた——9月17日から契約書配布、蚊帳の外の日本を報じた。欧州の規制がGoogleのプロダクト仕様を動かし、その恩恵も副作用も日本には届かない、という構図はここでも繰り返されている。検索の挙動は、もはや技術的な最適化の結果というより、地域ごとの規制の関数になりつつある。海外の英語圏メディアが報じる「Googleの変更」を読むときは、EEA限定かグローバルかを最初に確認する習慣が、日本の実務者には必要だ。

第三者コンテンツを持つメディアの点検項目

日本国内でサイトを運営する側の実務としては、次の3点を確認しておきたい。

  1. 第三者コンテンツの「理由」を言語化できるか。 ポリシーが問題視するのは、第三者コンテンツの存在そのものではなく、ホストの確立した評価シグナルを主な理由としてそこに公開されている状態だ。寄稿・監修・アフィリエイト特集・比較記事の各コーナーについて、「なぜ自社ドメインに置く必然性があるのか」を説明できるかを点検する。

  2. ディレクトリ単位で評価が切り離されても成立するか。 仮に日本でも将来同様の分類が適用された場合、/casino/ /loan/ /coupon/ といったディレクトリは、同種コンテンツとの比較にさらされる。ホストの権威に依存した設計なら、そのディレクトリ単体で勝てる品質があるかを問い直すことになる。

  3. 手動対策の通知経路を確保しているか。 EEA内でも通知自体は届く仕様である以上、日本ではなおさら通知が実害に直結する。Search Consoleのメッセージ受信先が退職者のアドレスのまま、という状態を放置していないか確認したい。

パラサイトSEOをめぐる攻防は、罰するか見逃すかの二択から、どこにコンテンツを置くと誰と比較されるのかという設計の問題へ移った。欧州の一報を「緩和」と読んで安心するのは、いちばん危うい読み方である。

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