2026年9月2日(水)
SEO

Googleは「最上位モデル」を出せないまま検索を更新し始めた——Gemini 3.7 FlashのAI Mode投入が縮めるGEOの時間軸

8月13日にGemini 3.7 Flashが発表され、翌14日には検索のAI Modeへ展開が始まった。前世代からわずか3週間、価格は半額。一方でフラッグシップのGemini 3.5 Proは遅延したままだ。検索の回答を生成するモデルが数週間単位で入れ替わる体制に入ったとき、GEOの効果測定はどの粒度で見るべきか。公式発表とベンチマークを突き合わせ、日本語圏がまだ対象外である意味も含めて整理する。

WebTech Journal 編集部

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Googleが8月14日、検索のAI ModeにGemini 3.7 Flashの提供を開始した。前世代の3.6 Flashが出たのは、その3週間前である。半年に一度のコアアップデートを前提に組み立ててきたSEOの時間感覚は、この一点だけでも組み直しが要る。

そして、この話の本当の読みどころは「何が来たか」ではなく「何が来ていないか」にある。

3週間で世代交代、価格は半額

Googleは8月13日、公式ブログでGemini 3.7 Flashを発表した。Gemini teamを代表して署名したのはProduct Management担当シニアディレクターのTulsee Doshi氏で、本文に「3.6 Flashのわずか3週間後のリリース」と明記されている。

公式発表に掲載された性能値は以下の通り(いずれも3.7 Flash対3.6 Flash)。

  • FrontierCode 1.1 Main: 43.6% 対 34.4%
  • DeepSWE v1.1: 65.3% 対 49.0%
  • GDP.pdf(複雑な文書処理の評価): 34.0% 対 22.0%
  • AutomationBench(実務ワークフローの遂行): 30.4% 対 17.0%
  • WebDev Arena Elo: 1588 対 1538

価格は年末までの導入価格として、入力100万トークンあたり0.75ドル、出力100万トークンあたり3.75ドル。公式ブログは「3.6 Flashの半額」と説明している。

ここで見落としたくないのは、この公式ブログに「検索」という言葉が一度も出てこないことだ。想定読者は開発者、エンタープライズ、そしてGemini appのSpark利用者である。検索への投入が明らかになったのは翌14日、Search Engine LandとSearch Engine Journalが相次いで報じたことによる。Google AI Pro/Ultraの加入者向けに、英語で、グローバルに展開。AI Modeの入力欄の「+」からモデルを選ぶ形で、「Gemini 3 models」セクションの中にAuto、Proと並んで置かれている。

つまり現時点のAI Modeにおける3.7 Flashは、有料加入者が明示的に選ぶオプションだ。既定の「Auto」がどのモデルを呼ぶかは公開されていない。日本語での提供もまだない。

出ないフラッグシップ、出続けるワークホース

同じ日にGoogleが言わなかったことがある。Gemini 3.5 Proの提供時期だ。

Bloombergは7月16日、現・元従業員10名の証言をもとに、3.5 Proのリリースがコーディング性能の社内目標未達によって遅れていると報じた。CNBCはこの報道を受けてAlphabet株が下落したと伝えている。そして8月13日の3.7 Flash発表時点でも、3.5 Proの提供時期は示されていない。Bloombergは8月13日にも、Googleが新しいFlashモデルを出す一方で最上位モデルは依然として遅延していると報じている。

構図はこうだ。最上位モデルは足踏みし、その間も「ワークホース(働き馬)」と自称する下位ラインが3週間刻みで更新され、検索に入っていく。

ここから先は筆者の見立てになる。Googleはいま、検索体験の改善をフラッグシップの完成に賭けていない。賭けているのは反復速度と単価である。

推論単価が半分になることの意味は、開発者の請求書よりむしろ検索側で大きい。AI Modeは原理上、対象クエリすべてに推論を走らせる。同じ計算予算で2倍回せるなら、それは対象クエリ種別・対象言語・対象国を広げる原資になる。英語限定で始まった今回のロールアウトが日本語に降りてくる時期は、モデルの賢さより単価カーブに規定される可能性がある。

ただし反論も成り立つ。モデル名が更新されても、AI OverviewsやAI Modeが「どのページを引用するか」の選定ロジックが同じ速度で変わる保証はない。引用は生成の前段にある検索・ランキング側の仕事であり、そこが3週間ごとに入れ替わっているという証拠は現時点で存在しない。モデル更新イコール引用傾向の変化、と短絡するのは早い。

GEOの効果測定は、月次では粗すぎる

実務への影響は、順位や引用の話より先に、測定の粒度に出る。

本誌が8月12日に報じた通り、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートで見えるのはインプレッションだけで、クリックもCTRもクエリも返ってこない。その乏しいデータを月次で均して見ていると、モデル世代の切り替わりで生じた変化は月内で相殺されて消える。

明日からできることは3つある。

  1. 生成AI関連の指標を週次で切る。 月次比較は、3週間サイクルのモデル更新と周期が合わない。少なくともモデル発表日にアノテーションを立て、その前後で分けて見る。段差が出たかどうかは、粒度を落とさないと観測できない。

  2. 「英語圏で観測された変化」を日本語圏の予測にそのまま使わない。 今回のように英語先行のロールアウトが続く以上、海外SEO情報で報告される引用傾向の変化は、日本語圏には当面適用されない。時差を織り込まずに施策を動かすと、効果検証そのものが成立しなくなる。

  3. モデル差し替えに耐える材料から積む。 一次情報、固有の数値、明示的な出典、構造化された事実。どのモデル世代でも参照価値が落ちにくいのはこの4つで、逆に「特定モデルの癖に合わせた書き方」は3週間で陳腐化しうる。プロンプト工学的なGEOテクニックへの投資は、この更新頻度の前ではリターンが読めない。

Googleが最上位モデルを出せずにいる期間は、皮肉なことに、検索の変化がいちばん読みにくい期間でもある。読めないものを予測しようとするより、どの世代でも通用する材料を積むほうが合理的だ。

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