SEOの実務は、ある「グレーな基盤」の上に立っている。検索順位チェックツールの多くは、Googleの検索結果ページ(SERP)を機械的に取得——つまりスクレイピング——して成り立っているという事実だ。Googleがこの基盤そのものを法廷で崩しにいった訴訟に、7月20日、最初の司法判断が出た。結果は、Googleの主要主張の棄却だった。
何が起きたか:SearchGuardとDMCAをめぐる攻防
Googleは2025年12月、検索結果取得APIを提供するSerpApiを提訴した。同社が検索結果へのアクセス制御技術「SearchGuard」を回避してSERPをスクレイピングし、データを転売しているとして、DMCAの回避禁止条項違反を主張した。
これに対し、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁は7月20日、DMCA主張の大部分を棄却した。判決のポイントは3つある。
第一に、URL・スニペット・事実情報の集合である検索結果は「著作権法で保護される著作物」にあたらないとし、著作権コンテンツを含まない検索結果に基づく主張は修正の余地なく棄却された。第二に、著作権コンテンツを含む検索結果に関する主張も棄却されたが、こちらはGoogleに21日以内の訴状修正が認められた。第三に、裁判所はSearchGuardが「著作権者の権限の下で」機能していることをGoogleが示せていないと指摘した。一方で、SerpApiがSearchGuardを回避したと推認できる事実自体は認めており、「回避はあったが、それはDMCA違反ではない」という構図だ。
なぜこれがSEO業界の大事件なのか
順位計測は、SEOという職業の根幹にあるインフラだ。そして生成AI時代には、AI OverviewsやAI Mode、ChatGPTの回答内で自社がどう言及されるかを追跡する「AI可視性計測」ツールが同じスクレイピング構造の上に次々と生まれている。本誌が報じたAI Overviewsの表示率43%への急拡大は、まさにこの計測ニーズを押し上げている当のトレンドだ。
Googleが法的手段でスクレイピングを止められるなら、これらのツール群は存続の前提を失う。今回の判決は、少なくとも「公開SERPの取得=著作権侵害」という最短ルートを封じた点で、計測ツール業界にとって当面の防衛線になった。
楽観は禁物:残された3つの不確定要素
ただし「スクレイピング全面合法化」と読むのは早計だ。第一に、Googleは著作権コンテンツを含む部分について訴状を修正して再挑戦できる。第二に、今回の判断はDMCAという特定の法理に関するもので、契約違反など他の法的構成の可能性は残る。第三に、法で止められないならGoogleは技術的防御——SearchGuardの強化——に向かうと考えるのが自然だ。取得コストが上がれば、それはいずれツール利用料に転嫁される。
また、これは米国の訴答段階の判断であり、日本では著作権法・不正競争防止法・利用規約の論点が別建てで存在する。国内で順位計測ツールを使うこと自体の実務リスクが今回の判決で変わるわけではない点も付記しておく。
実務への示唆:計測が「止まる日」を想定しておく
日本のSEO担当者への示唆はシンプルだ。順位データもAI可視性データも、プラットフォーム側の対抗策ひとつで精度が落ちたり止まったりし得る外部依存データだと認識しておくこと。Search ConsoleやアナリティクスなどのファーストパーティデータとSERP計測を併用し、単一ツール依存のレポーティングを避ける設計が、この攻防の時代の保険になる。