検索マーケティングの前提が、2026年5月に二重で書き換えられた。一つはGoogleがI/O 2026で発表した検索の全面刷新。もう一つは、その直後に始まったMay 2026コアアップデートだ。片方だけでも順位は揺れる。両方が重なった今、SEO担当者は「待つ」ではなく「設計を変える」局面に入っている。
何が起きたのか——事実の整理
Googleは公式ブログで、AIモードの月間利用者が10億人を突破し、利用開始から四半期ごとにクエリ数が倍増していると発表した。AIモードでの検索クエリは従来検索の平均3倍の長さで、デフォルトモデルは新型のGemini 3.5 Flashに切り替わった。さらに24時間バックグラウンドで情報を追う「情報エージェント」も投入される。Googleはこれを「検索ボックスにとって25年以上で最大の変化」と位置づけている。
そのわずか前日、米国時間5月21日にMay 2026コアアップデートのロールアウトが始まった。完了まで最大2週間、つまり6月初旬まで順位変動が続く見込みだ。国内ではCINCがKeywordmapを用いた一次見解レポートを速報で公開しており、SERPs全体の変動を追える体制が整いつつある。
数字が示す「クリックされない検索」の常態化
ここで考察に入る。AIモードの拡大とコアアップデートを別々の出来事として処理すると、本質を見誤る。両者は同じ方向——検索結果ページ内で完結する体験——を指している。
Digidayがまとめたデータによれば、Similarweb調べでゼロクリック検索はGoogleクエリ全体の約60%、ニュース領域では69%に達した。AIモードに限れば93%がクリックを生まないとする分析もあり、通常のAI Overviews(43%)を大きく上回る。結果として、2025年11月までの1年間でパブリッシャーへの検索流入は世界全体で33%減少。HubSpotは自然流入の7〜8割を失ったと推計し、教育系のCheggも49%減を報告している。
これらを総合すると、「上位表示されればクリックが得られる」という10年来の前提が崩れつつある、と筆者は見る。順位は維持できてもクリックは減る。コアアップデートで上下する以前に、土台のクリック率そのものが構造的に下方シフトしているのだ。
ただし「終わり」と決めつけるのは早い
一方で、悲観一色も正確ではない。AI Overviewsの表示率はテーマで大きく異なり、ヘルスケア領域が43%なのに対しECや商品比較は3.2%にとどまるとの集計がある。取引意図の強いクエリでは、ユーザーは依然として比較・購入のためにサイトを訪れる。情報提供型の記事が直撃を受ける一方、購買導線に近いコンテンツは相対的に守られている、という濃淡を見落とすべきではない。
日本のSEO担当者が今すべきこと
第一に、自社流入を「情報型」と「取引型」に分解して計測すること。前者の流入が落ちても慌てず、後者の維持・強化に資源を寄せる判断ができる。第二に、AIモードに引用される前提でコンテンツを設計し直すこと。長く具体的なクエリに対し、結論・根拠・一次情報を構造化して提示する、いわゆるGEO(生成エンジン最適化)の発想が要る。第三に、コアアップデートの変動は2週間待ってから評価すること。ロールアウト途中の順位で施策を打つと、揺り戻しに振り回される。
クリックを前提にしたKPIから、検索内での露出と指名想起を含めたKPIへ。評価軸の組み替えこそ、この二重変化に対する最も現実的な備えである。