2026年10月12日(月)
業界動向

Googleが「AIに使われたコンテンツ」に金を払い始めた——ただし計算式は誰も知らない

GoogleがSearch Console内で「AI contribution」と呼ぶパイロットを走らせている。AI Overviews、AI Mode、Geminiの回答に「大きく寄与」したコンテンツに対価を払う仕組みだ。Googleは事実を認めたが、金額の算出方法は開示していない。招待されたパブリッシャーが見るのは月次の金額だけ。声がかかっているのが大手ではなく中小だという点に、この制度設計の本質がある。

WebTech Journal 編集部

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「AI contribution」という名前の収入欄

Googleが、AI生成の回答に使われたコンテンツに対してパブリッシャーに支払いを始めている。Digidayが9月14日に報じ、Googleが事実関係を認めた。

正式には「AI contribution pilot」。Search Consoleの機能として、招待された一部のパブリッシャーにのみ表示される。サインアップ画面にはこうある——AI生成の回答にコンテンツが大きく寄与したとき、収益が積み上がる、と。対象はAI Overviews、AI Mode、Geminiだ。

Search Engine Landのバリー・シュワルツによれば、この「AI contribution」というレポート自体は4月には存在が確認されていた。当時Googleは問い合わせに応じなかった。9月になって、Googleはこれを、質の高いコンテンツにどう報いるのが最善かを検証する初期段階の学習パイロットだと説明している。

Digidayによれば、少なくとも数十社が声をかけられている。特徴的なのは、その内訳だ。大手より中小規模のパブリッシャーに受け入れられており、対象はニュース媒体の枠をすでに超えて広がっている。

「使用量」ではなく「価値」で払う、という選択

この制度の核心は、支払いのトリガーにある。

Googleが採用したのはpay-per-use(使用量課金)ではなく、pay-per-value(価値課金)だ。回答生成の過程でコンテンツが「大きく寄与した」とGoogleが判断したときにだけ計上される。回答生成後に貼られるリンクやファクトチェックは対象にならない。

そして「大きく寄与した」の定義は、Googleが握っている。参加者がSearch Console上で見られるのは月次の金額と多少の履歴だけで、計算根拠の説明はない。前払いはなく、利用実績ベースで、いつでも離脱できる。

この2モデルの差は、値付けの権限がどちらにあるかという差だ。使用量課金なら、引用されるたびに値段がつく。価値課金なら、値段をつけるのは払う側のままだ。

パブリッシャー連合Spurの創設者デビッド・バトル氏は、Digidayに対し、Googleはジャーナリズムの実使用量に基づいて支払う市場を望んでいない、その方向はコンテンツに払わないことを前提に組み立てられた検索モデルにとって蟻の一穴になる、と指摘している。彼はこのパイロットをヘッジ——そういう世界が来た場合に備えたインフラの試運転——と表現した。

一方で同氏は、このパイロットが有用な前例も作っているとも述べている。使用という事象に価値があること、そして自社コンテンツが回答に寄与したときにパブリッシャーがそれを知る権利があること。この2点を、Google自身が認めた形になる。

「雀の涙」と「テントの中」

参加者の評価は割れている。

パイロット内部の複数のパブリッシャー幹部は、リファラルトラフィックが戻るのを待つよりテントの中にいたい、とDigidayに語っている。Googleは一部パートナーと週次の通話を持っており、きわめて協調的だと評した参加者もいる。

参加者のひとりが挙げた真の見返りは、金ではなくフィードバックループだった。かつてSearch Consoleが「検索順位にとって何が効くか」を可視化したように、「AIにとってどのコンテンツが効くか」が見えるようになる——それが価値だという主張だ。

対して、外側の評価は厳しい。関係者のひとりはこの金額を、広告収入に比べれば雀の涙だと表現している。別の出版社幹部は、提示された安すぎる数字が参加の閾値に届かなかったと述べた。

さらに鋭い懸念がある。参加すること自体が、将来の交渉で不利に働く可能性だ。Googleは「すでにAI要約の使用について対価を払っている」と主張できるようになる。プログラム外の幹部の見方はもっと直接的で、規制圧力の下でGoogleが貢献しているように見える状態を作り、パブリッシャーを少数ずつ取り込むことで分断している、というものだ。

Madison and Wallのルーク・スティルマン氏は、同じ力学をGoogle側から見ている。この種のプログラムはパブリッシャーに追加の上振れを与えつつ、コンテンツ利用をめぐるGoogleの法務リスクと評判リスクを下げる、と。同氏はそのうえで、パブリッシャーにはAIによる発見のあり方を変える力がほとんどない以上、今のうちに新しい収益源を作り、広告依存度の低い事業に再投資するほうが得だとも述べている。

招待が来ていない側がやるべきこと

日本のパブリッシャーに声がかかったという報道は、確認できる範囲では見当たらない。だが、待つ以外にやることはある。

Search ConsoleのAI関連レポートは、パイロット参加者でなくても見られる。AI面(AI surfaces)のインプレッションを扱うレポートは8月から提供が始まっており、ある出版社幹部は、その数字が想定より高く、かつ従来検索とDiscoverから失われたトラフィックとよく連動していたとDigidayに語っている。Googleは9月16日、Search ConsoleのAI関連の掲載順位レポートは今後も形が変わっていくと述べている。

つまり、AI面でのインプレッションが増える一方でクリックが減っている——その落差を自社のデータで測れる環境は、すでに全員に開いている。パイロットの金額より、まずこちらの数字だ。

そして、もし招待が来たら。聞くべきは金額ではない。どんなデータが金額に付いてくるかだ。寄与回数か、クエリのカテゴリか、コンテンツ単位の帰属か。月次の金額だけなら、戦略的な価値はほとんどない。

本誌が9月14日に報じたGoogleが自ら「29年で最大の品質低下」と呼んだ改修——EUで起きたことは、9条を持つ日本に来るのかで扱ったとおり、Googleの制度変更は規制圧力の形を映す。今回のパイロットも、コンテンツの対価という論点が規制の射程に入り始めたことへの応答として読むのが自然だ——というのが筆者の見方である。

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