5月7日、静かに発表された「お知らせ」の重さ
Google検索セントラルのFAQページ構造化データドキュメントには、5月上旬から目立たないが決定的な文言が掲示されている。「2026年5月7日以降、よくある質問のリッチリザルトはGoogle検索に表示されなくなります」「検索での見え方、リッチリザルトレポート、リッチリザルトテストのサポートは2026年6月に終了する予定です」「Search Console APIでのサポートは2026年8月に終了します」。
ブログでの大々的なアナウンスはなく、廃止の理由も明示されていない。Search Engine Landの報道は、これを「2023年8月に政府・保健機関以外でのFAQリッチリザルトが事実上停止された流れの完結」と位置付けている。残っていた数少ない例外もここで閉じられた、というのが構造的な見立てだ。
Googleは廃止後も「FAQ構造化データはページ理解のために引き続き利用する」と明記している。リッチリザルトとしてのSERP表示は消えるが、データ層としての役割は残るというメッセージだ。ここを軽く流すと、今回の意味を取り違える。
なぜFAQだけがリッチリザルト系から外れていったのか
2023年8月にFAQリッチリザルトの対象が政府・保健機関に絞られたとき、Googleは検索結果のスペース効率と信頼性のバランスを理由として挙げていた。今回の完全終了は、AI OverviewとAI Modeが検索体験の中心に座る現状では、リッチリザルトでSERPを縦に伸ばす方向そのものが時代遅れになったと読むのが自然だ。
注目すべきは、Googleが廃止と同時に「FAQ構造化データはページ理解のために引き続き利用する」と宣言した点だ。これは「マークアップは続けてほしい、ただし表示の見返りはSERP装飾ではなくAI生成への引用という形に変わる」というメッセージに読める。
Ahrefsの『38%』が同じ流れを別角度から裏付ける
ここで重ね合わせたいのが、Ahrefsが2026年初に公開したAI Overview引用元の追加分析だ。86.3万キーワード・約400万URLを対象としたこの研究では、「AI Overviewに引用されているページのうち、同じクエリでGoogleの上位10位にも入っていた割合は約38%」と示された。7か月前の同社調査では76%だったので、約半年で半減している。
別の媒体であるBrightEdgeの分析では、トップ10との重複は17%程度にまで落ちると報告されている。手法によって幅はあるが、いずれも「ランクとAI引用は別の評価軸になり始めた」というメッセージで一致する。
この背景には、AI Overviewが本来のクエリだけでなく関連サブクエリへの「query fan-out」を内部で行い、複数のSERPから引用元を選んでいる構造がある。直接ランクが上位でなくても、サブクエリの上位なら引用される。逆に、本来のクエリで1位でも、サブクエリで他のページが上位を占めれば引用されない可能性がある。
一方で、この38%という数字を「ランキング不要」と読むのは早計だ。Ahrefs自身が指摘するように、ブランド名・実名サイトのオーソリティはAI Overviewの引用元選定でも重視されている。順位最適化を捨てるのではなく、順位+AI引用の両軸で評価する必要がある、というのが妥当な読み方だ。
SEO担当が今期動かす3つの棚卸し項目
2つの動きを並べると、今期取り組むべきテーマが見えてくる。
第一に、FAQ構造化データの撤去ではなく『再配置』を計画すること。リッチリザルトは消えるが、AIによる文脈理解の素材としては機能し続ける。問題はFAQの中身だ。SEO目的で並べた質問・回答ペアの多くは「すでに本文中で答えている内容の再記述」になっており、AIが引用するに値しない。今回の廃止は、FAQブロックを「ページ要約のメタデータ」として作り直す好機だ。Search Console API利用者は8月までにデータ取得処理の調整を済ませる必要もある。
第二に、コンテンツの単位を『1ページ=1回答』から『1段落=1回答』に分解すること。AI Overviewのquery fan-outは、ページ単位ではなく段落・要素単位で引用元を選んでいる。長尺記事の中でも引用される段落と無視される段落が混在する。見出し直下に「結論を1〜2文で書く」「数値や定義を箇条書きで明示する」といった旧来の慣行が、AI時代にこそ効いてくる。
第三に、ブランド・著者の権威性を可視化すること。HowTo・FAQの装飾が外され、AIによる要約引用の比重が増す状況では、引用元として選ばれるかどうかをページ品質だけで決められなくなる。著者プロフィールの構造化、所属組織のSchema、過去発信の集約は、AI Overview対策と従来のE-E-A-T対策が同じテーブルに乗る局面に入ったことを示している。本誌が以前報じたHubSpotのAEOツール投入も、この権威性データを供給する手段の1つと位置付けられる。
まとめ——「リッチリザルトの終わり」ではなく「データ層の役割転換」
GoogleがFAQリッチリザルトを終了したという1行のニュースは、表面だけ見れば「装飾機能が1つ消えた」だけの話だ。だが、Ahrefsの38%、AI Mode 10億ユーザー超といった周辺指標と合わせて読むと、構造化データそのものの役割が「SERPの見た目を稼ぐ材料」から「AIが文脈を組み立てるためのデータ層」へ移っていく転換点だと分かる。
日本のSEO担当者にとっては、6月のレポート・テスト終了、8月のAPI終了という具体的なスケジュールが先にやってくる。そのオペレーション対応と並行して、FAQ・著者・ブランドのデータ整備を「リッチリザルト用」ではなく「AI引用用」に再定義しておくことが、2026年後半の検索流入を分ける作業になる。