値上げが2つ重なると、どちらか片方しか見ていない担当者が必ず出る。LINE公式アカウントで、いままさにそれが起きようとしている。
事実:12月1日、プレミアムIDの料金が改定される
LINEヤフーは9月1日、LINE公式アカウントの「プレミアムID」料金を2026年12月1日に改定すると発表した。公式のお知らせには、対象となるサービス提供国・地域は日本のみと明記されている。
現行料金は、公式の料金プランページによれば月額100円(税別)または年額1,200円(税別)。新料金についてWeb担当者Forumは、月額400円(税別)または年額4,800円(税別)になると報じている。公式お知らせでは新料金が画像で示されているため、本稿では金額の出典を同紙報道に依拠する。
プレミアムIDは、アカウント開設時に自動発行されるランダムなベーシックID(例:@526mkfsi)の代わりに、希望の文字列(例:@line_yahoo)を取得できる有料オプションだ。ブランド名や店舗名でIDを取得している企業・店舗は、すべてこの改定の対象になる。
10月の改定とは、効く場所がまったく違う
本誌は9日、10月1日に追加メッセージ料金が2段階制へ移行する件を報じた。同じ「LINEの値上げ」として一括りにされがちだが、この2つはコスト構造の別の層に効く。
- 追加メッセージ(10/1):従量課金。スタンダードプランのみ利用可。配信通数に比例する変動費
- プレミアムID(12/1):アカウント単位の固定費。その月に1通も配信しなくても発生する
この差は、痛みを感じる企業が入れ替わることを意味する。大量配信するEC・通販は10月の改定で効く。一方、12月の改定で効くのは「アカウント数が多い」事業者だ。課金のベースが配信量ではなく、口座の数になる。
多店舗運営ほど、気づかれずに総額が動く
LINE公式アカウントの月額固定費は、コミュニケーションプラン0円(無料200通)、ライトプラン5,000円(5,000通)、スタンダードプラン15,000円(30,000通)の3階層だ(いずれも税別)。プレミアムIDはこれとは別枠のオプションで、プランに関係なく契約できる。
店舗ごとにアカウントを分け、それぞれ店舗名でプレミアムIDを取っている運営を想定して試算する。年額換算で1IDあたり1,200円→4,800円、差額は3,600円だ。
- 10店舗:年間 +36,000円
- 100店舗:年間 +360,000円
- 300店舗:年間 +1,080,000円
これは公表単価に店舗数を掛けた本誌の単純計算であり、実際の請求額は購入経路や契約形態によって変わる。公式には、iOSアプリ経由で購入する場合は価格・取引条件が異なると明記されている点にも注意が必要だ。
ここからは考察になるが、1店舗あたり月300円の増額は、単体では稟議に上がらない金額だ。だからこそ多店舗チェーンでは、「誰も気づかないまま総額だけが動く」種類の値上げになる。フランチャイズで加盟店が個別に支払っている場合は、本部の予算には一切現れないまま、加盟店のコストだけが上がるという形もあり得る。
12月1日までにやる4つのこと
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プレミアムIDの棚卸し。 自社が何アカウントでプレミアムIDを取得しているか、即答できる企業は多くない。管理画面のアカウント一覧を出し、ID種別を数えるところから始める。
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使っていないIDの特定。 閉店した店舗、統合されたブランド、検証用に作ったアカウント。年1,200円だから放置されていたものが、年4,800円になる。解約の判断は改定前のほうがしやすい。
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月額/年額の契約形態の確認。 プレミアムIDには月額と年額の2形態がある。改定日をまたぐ既存の年額契約がどう扱われるかは、公式お知らせに明示がない。金額規模が大きい場合は、LINEヤフーまたは代理店に事前確認しておくのが安全だ。憶測で「年額に切り替えれば旧料金を確保できる」と判断するのは避けたい。
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10月改定と合算した年間試算。 変動費(配信)と固定費(ID)を1枚のシートに載せる。個別に見ると小さく、合算すると無視できない、という典型的な形になる。
この2つを並べると見えること
考察として書くが、LINEヤフーは同じ四半期内に、従量課金と固定費の両方を引き上げた。片方だけなら「値上げ」だが、両方となると「収益構造の作り直し」に近い。そして、いずれも対象は日本のみである。LINEにとって日本市場が、価格改定を吸収できる市場と判断された、ということでもある。
ただし、これを一方的な負担増としてだけ読むのは早い。プレミアムIDは検索性とブランド識別性を買う投資であり、そもそも「取らない」という選択肢が常にある。ベーシックIDのままでも、QRコードや友だち追加リンクからの流入は成立する。IDを直接入力して友だち追加するユーザーが自社にどれだけいるかは、流入経路データで測れるはずだ。
残り3か月は、値上げに備える期間であると同時に、そのオプションの効果を測り直す猶予期間でもある。