順位表は動いていない。動いたのは中身だ
米国の最も訪問されたウェブサイトのリストを1年前と並べると、上のほうは驚くほど変わっていない。
1位はGoogleで月間253億訪問。2位はYouTubeで103億。3位はRedditで26.1億。順位は3つとも据え置きだ。
それだけを見て「何も変わっていない」と結論づけると、間違える。Googleは前年比10.72%増、YouTubeに至っては36.6%増。上位3サイトだけで上位10サイトのトラフィックの54.3%を占め、上位10サイトは上位150サイトの合計の68.6%を握る。1年前は68.8%だった。その上位150サイトの合計訪問数は、前年比で6.1%しか伸びていない。
つまり、AIが検索を揺さぶっているあいだ、ウェブの集中度は緩んでいない。むしろ固まった。この「動いていない」という事実のほうが、実はニュースだ。
最大の勝者はChatGPT、最大の敗者はBing
変化は順位表の中位から下で起きている。
Search Engine Landが9月4日に公開した分析によれば、ChatGPT.comは前年比48.38%増の月間10.9億訪問で、米国の全サイト中9位。DuckDuckGoとBingを抜いた。2008年と2009年から存在する検索エンジンを、AIチャットボットが追い越したことになる。
一方、上位20サイトで最も落ちたのはBingだった。50.43%減。ニュースサイトでも斜陽のSNSでもなく、検索エンジンである。
ここは考察として書く。MicrosoftはCopilotをBingに統合することに3年と巨額の資金を投じてきたが、この数字はその賭けが期待通りには機能していないことを示唆する。対比が示すのは、「既存の検索面にAIを載せる」戦略と「AIそのものが独立した面になる」戦略の差だ。ChatGPTは後者を選び、Bingは前者だった。少なくとも直近1年の米国データでは、後者が勝っている。
他の動きも押さえておきたい。LinkedInは前年比15.48%増の4.737億訪問で21位から19位へ上がり、このデータで初めてトップ20に入った。TikTokは14位、5.736億訪問だが伸びは1.63%にとどまる。「新しいプラットフォームが軒並み勝っている」わけではなく、生成AIの利用が新奇性から習慣に移った結果が、単独で突出しているという構図だ。
下落側ではTemuが28.55%減。こちらは原因が明確で、低額の中国からの輸入品に対するデミニミス(少額免税)が2025年半ばに終了し、価格優位が崩れたことによる。
GA4は、この移動を「direct」としか呼べない
ここからが実務の話だ。
前掲記事の筆者は、無償で支援している専門出版サイトのGA4を1年ぶりに開いた。2026年1月1日〜8月26日を前年同期と比べると、セッションは105%増、エンゲージメントのあったセッションは111%近い増加、キーイベントは約80.5%増。ここで止めれば「絶好調です」という報告になる。
同じレポートを下まで読むと、directが157%以上伸び、全トラフィックの78%超を占めていた。1年前は62.5%程度だった。4件のうち3件以上について、GA4は流入元を特定できていない。
この「見えなさ」は、複数の変化が重なった結果だ。
本誌が8月31日に報じた通り、Googleは検索結果のリンクをgoogle.com/goto経由に切り替えており、リファラの構造そのものが変わった。9月2日にはSearch Consoleの生成AIパフォーマンスレポートが全世界に展開されたことを報じたが、このレポートが渡すのはインプレッションのみで、クリックは含まれない。実際、Googleの公式ヘルプが挙げるディメンションはページ・国・日付・デバイスの4つで、指標はインプレッション数だ。
AI経由の流入は、参照元を持たずに直接訪問として着地しやすい。そして着地した先で、それがAIからの訪問だったと証明する材料が、どのツールにも十分には揃っていない。
「増えた」は言えても「なぜ増えた」が言えない
この状態でSEOの成果を説明しようとすると、証明の負荷が一気に上がる。使える補助線を3つ挙げる。
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指名検索の推移と direct の相関を取る。AI経由でブランドを知った層は、その後に指名検索か直接訪問で来る。Search Consoleのブランドクエリのインプレッション・クリックと、GA4のdirectを同じ時間軸に置くと、連動しているか独立しているかが見える。連動していれば「認知の増加が両方を押している」という説明が立つ。
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生成AIパフォーマンスレポートのインプレッションを、ページ単位でdirectと突き合わせる。クリックが渡されない以上、相関で代替するしかない。AI面でのインプレッションが伸びたページのdirectが伸びているなら、傍証にはなる。
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サーバーログでAIクローラのアクセスを分ける。訪問者としてのAIではなく、収集側のAIの動きは、ログにしか残らない。
この数字をそのまま日本に持ち込む前に
反論も並べておく必要がある。
Semrush Traffic Analyticsはパネルベースの推計であり、各サイトの実測値ではない。前年比50%減という数字は、推計手法の変更やパネル構成の変化にも影響を受け得る。またBingの絶対数はGoogleと2桁違うため、「Bing半減」が即座にMicrosoft広告の在庫半減を意味するわけでもない。日本市場ではYahoo! JAPANの存在があり、検索の勢力図はそもそも米国と異なる。
それでも、日本の運用に移せる示唆はある。
レポートの主指標を「オーガニックセッション数」に置いたままだと、来年は説明ができない。指名検索のインプレッション、direct、AI面でのインプレッションを合成した指標を、今期のうちに定義しておくべきだ。定義を変えると前年比が切れるので、変えるなら早いほうがいい。
そして、2027年度のSEO予算を通そうとしている担当者へ。この1年のデータが示しているのは「オーガニック流入が減った」ではなく、「ウェブの入り口の集中度が変わらないまま、入り口の顔ぶれだけが入れ替わっている」という話だ。予算の根拠を「トラフィック」に置くか「入り口での存在感」に置くかで、通し方はまったく変わる。