ChatGPTの会話の下部に、見覚えのあるUIが現れ始めた。複数の商品が横並びに表示される「カルーセル」——Google Shoppingでおなじみのあの形式だ。Digidayが8月6日、スクリーンショットを検証したうえで報じた。
確認された事実:フィードから自動生成、表示判断はOpenAI側
報道によれば、新しいカルーセル形式は、1つのChatGPT広告枠の中に複数の商品を表示する。掲載位置は従来と同じく会話の下部で、広告である旨のラベルが付く。現時点でカルーセルに並ぶのは単一の小売事業者の商品のみだ。
注目すべきは意思決定の所在である。単品広告を出すかカルーセルを出すかは、広告主が選ぶのではなく、OpenAIの広告システム側が判断する。商品情報は小売事業者の商品フィードから直接引き出される。つまり広告主が制御できるのは「フィードに何を、どんな品質で載せるか」までだ。
この動きは突然ではない。OpenAIは今年1月に広告テストを公式に認め、5月には商品カタログから広告を一括生成できる「商品フィード」キャンペーンを導入した。そこからわずか3カ月でのカルーセル化である。
なぜ今か——Q4という「最初の審判」
タイミングの意味は明快で、年間最大の広告出稿期であるQ4(ホリデー商戦)が迫っている。Digidayの取材に応じた米エージェンシー幹部は「OpenAIからフィード型広告についてのガイダンスが増えてきた。ホリデー商戦を前に、商品がChatGPTの会話の中で発見されるようにしたいのだろう」と語る。AdthenaのCMOは「Q4は彼らにとって重要な期間になる。広告主は2027年の予算を計画する中で、このエンジンにいくら割くべきかを問い始める」と指摘した。
背景には収益目標がある。報道ベースでは、OpenAIは2026年に25億ドル、2030年には1,000億ドル超という広告収益目標を掲げているとされる。数字の真偽はともかく、広告事業の本格化が既定路線であることは、この3カ月の機能拡張ペースが物語っている。
交差分析:「フィード」がクリエイティブの原稿になる
本誌はこの1週間で、ChatGPT広告のAgentキャンペーン(リンク先がWebサイトではなく企業のAIエージェントになる形式)と、Googleによるショッピング広告説明文のAI書き換えを報じてきた。今回のカルーセルを重ねると、プラットフォームを問わず同じ構造変化が進んでいることがわかる。
広告主が「広告を作る」のではなく、構造化されたデータ(商品フィード)を渡し、見せ方はプラットフォームのAIが決める——という分業だ。フィードの品質がそのまま広告の品質になる。タイトル、属性、画像、価格情報の整備は、これまで「ショッピング広告の下ごしらえ」だったが、AI検索時代には広告クリエイティブそのものになる。
一方で、懸念も既視感がある。Google Performance Maxで業界が経験してきた「ブラックボックス化」への警戒だ。どの商品がなぜ選ばれたのか、単品とカルーセルでどう成果が違うのかをOpenAIがどこまで開示するかは現時点で不明で、計測・検証の枠組みは広告主側が要求していく必要があるだろう。
日本への示唆:Merchant Centerの資産がそのまま効く可能性
ChatGPT広告のパイロットは、5月時点で英国、メキシコ、ブラジル、韓国と並んで日本への拡大が報じられている。日本のEC事業者にとって幸いなのは、この変化への備えが「ゼロから」ではないことだ。Google Merchant Center向けに整備してきた商品フィードの資産——正確な商品タイトル、GTIN、属性、高品質画像、在庫・価格の即時性——は、OpenAIのフィード型広告でもほぼそのまま競争力になる可能性が高い。
今からやるべきことは3つある。第一に、フィードデータの棚卸し。空欄の属性、雑なタイトル、低解像度画像は、AIが商品を「選ばない」理由になり得る。第二に、ChatGPT経由の流入・売上を識別できる計測設計。第三に、Q4の予算計画にAI面の実験枠を確保しておくことだ。カルーセルはまだ米国中心の実験段階だが、「会話の中で商品が選ばれる」時代の入口は、もう開いている。