広告主が書いていない説明文が、広告に載る
7月30日、Googleのショッピング広告・商品広告にAI生成の説明文が表示されているのを、SERP分析で知られるBrodie Clark氏が発見した。Search Engine RoundtableとSearch Engine Landが同氏のスクリーンショットとともに報じている。商品広告の下部に、広告主が入稿したものではないAI生成のテキストが付加される形だ。Googleからの正式発表はない。
これは突然の動きではない。7月上旬には通常の検索広告(スポンサー枠)でAI生成の要約が確認されており、その際Googleの広報は「AI生成のコンテキストを検索広告に加えることが、ユーザーのより良い意思決定に役立つかを確かめる小規模な実験」と説明していた。今回のショッピング広告への拡大は、その実験が「テキスト広告→商品広告」へ一段進んだことを意味する。
広告主はなぜ反発しているのか
Search Engine Roundtableによれば、この実験は広告費を支払う広告主の間で強い反発を呼んでいる。懸念の中心はCTR(クリック率)への影響だ。AIが付加した説明文がクリックを抑制する方向に働けば、広告主は「自分が書いていない文言のせいで、支払った広告の成果が下がる」ことになる。
ここには構造的な論点がある。従来、広告の文言は広告主が完全にコントロールできる数少ない領域だった。審査はあっても、何を訴求するかは広告主が決める。AI生成説明文はこの前提を変える。Googleが「ユーザーにとって最も関連が高い」と判断した情報が、広告主の意図とは無関係に表示面へ載るからだ。訴求の優先順位——たとえば「価格の安さ」を前面に出したいのに、AIが「返品ポリシー」を要約する——が、プラットフォーム側のアルゴリズムに委ねられる。
7月に本誌が報じたAI生成広告のラベル運用と並べると、流れはより明確になる。プラットフォームは「広告がどう作られたか」の開示を広告主に求めながら、同時に「広告がどう表示されるか」の決定権を自らの手に集めつつある。
反対のシナリオ:AI説明文はCVRを上げるかもしれない
公平のために、逆の可能性も指摘しておきたい。AI生成の説明文が商品情報を的確に補えば、クリック前にユーザーの期待値が正しく調整され、CTRは下がってもCVR(購入率)は上がる可能性がある。「クリックの量」から「クリックの質」への転換は、CPC課金の広告主にとって必ずしも損ではない。Googleが「意思決定支援」を実験の目的に掲げているのは建前だけではないだろう。ただしその場合でも、成果が改善するか悪化するかを広告主自身が制御できないという非対称性は残る。
AIが書く「原材料」は商品フィードである
では広告主に打ち手はないのか。ここからが実務的に最も重要な論点だ。
AIが説明文を生成する際の情報源は、突き詰めれば商品フィード(Merchant Centerのデータ)と商品ページだ。Search Engine Landが7月31日に公開した分析も、AIショッピング体験では構造化された商品データが「何が表示されるか」を決めており、Merchant Centerフィードが発見可能性の鍵だと指摘している。つまり、AIに「何を書かせるか」を間接的にコントロールする手段は、フィードの品質そのものだ。
これは米手芸チェーンMichaelsのAIアシスタントが従来のサイト内検索の2倍超のCV率を出した事例で本誌が指摘した構造とも重なる。AI経由の購買体験では、人間向けの「見せるコンテンツ」より、機械可読な「構造化された商品情報」が成果を左右する。広告コピーライティングの技術が不要になるのではなく、その適用先が「広告文入稿欄」から「フィードの属性設計」へ移るということだ。
日本のEC事業者が正式展開前にやるべきこと
この種の表示実験は米国・英語圏から始まり、日本語への展開はその後になるのが通例だ。ただし、過去のAI Overviewsの展開速度を見る限り、「日本語は当分先」という楽観は禁物である。しかも日本語は生成AIによる要約の品質が英語より不安定になりやすく、フィード情報が貧弱な商品ほど、AIが的外れな説明文を生成するリスクが高い。
正式展開までにできる準備は明確だ。第一に、Merchant Centerフィードの必須外属性——素材、サイズ、対象、互換性、返品条件など——を埋め切ること。AIの生成材料を自ら供給する発想だ。第二に、商品ページの情報とフィードの整合性を取ること。矛盾があればAIの説明文が誤る温床になる。第三に、テスト展開後の変化を検知できるよう、ショッピング広告のCTR・CVRのベースラインを今のうちに記録しておくことだ。
広告の見た目を最終的に決めるのが広告主ではなくAIになる世界は、すでに実験として動き始めた。「入稿した通りに表示される」ことを前提にした運用マニュアルは、静かに賞味期限を迎えつつある。