2026年9月2日(水)
データ分析

ChatGPT流入が1年で4倍になっても、レポートには1割も映らない——AI経由の売上を「ブランド検索」に取り違えている

DemandbaseがB2Bサイト1,584テナント・110億訪問の計測から、ChatGPTからの月間リファラルが1年で303%増えたと発表した。だがSimilarwebの別調査では、AIに影響された訪問のうちリファラとして計上されるのは8.8%にすぎず、約56%はブランド検索として着地している。GA4は2026年5月にAIアシスタント用のチャネルを追加したが、それが拾えるのは前者だけだ。AI流入を「増やす」KPIが構造的に誤差を測ってしまう理由と、代わりに何を基準線に置くべきかを整理する。

WebTech Journal 編集部

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「AI経由の流入が伸びている」という話と、「レポートを見てもたいして増えていない」という現場の実感は、両方とも正しい。数え方が違うからだ。

645,000から260万へ、ただし全体の0.3%

アカウントベースドマーケティングのDemandbaseが8月12日、自社のLabs部門による計測を公開した。PPC Landの分析によれば、同社が計測するB2B向けWebプロパティへのChatGPT経由の月間リファラル訪問は、2025年6月の約64万5,000から2026年6月の260万へ、303%増えた。データは1,584のプラットフォームインスタンス、110億超の訪問、2025年6月1日から2026年7月31日まで。伸びは滑らかではなく、2026年5月に前月比で倍以上に跳ねている。

同時に押さえるべきは分母だ。110億訪問を約14か月で割ると月あたり7億8,600万前後。そこに対する260万は、計測トラフィック全体の約0.3%にあたる。1,584テナントに均せば、1テナントあたり月1,700訪問の増加でしかない。303%は実数ではなく、小さな基数の上の比率である。

他のアシスタントは追随していない。Demandbaseによれば、Perplexityからのリファラルは同期間に減少し、GeminiとClaudeは横ばい。ただし3社については絶対値もシェアも公開されていないので、「減った」「横ばい」がどの規模の話なのかはわからない。

本誌が先日報じたShopifyのQ2データでは、AI経由流入の伸びが8倍から3倍に減速していた。あちらはEC・消費者側、今回はB2B側。同じ「AI流入」という言葉が、セグメントによってまったく違う曲線を描いている。

8.8%という、もっと重要な数字

ここからが本題だ。

Similarwebが6月21日に公開した調査では、AIに推奨されたブランドは7日以内にサイト訪問を受ける確率が2.5倍になる。ただし、そのAI起因の訪問のうち、直接のリファラルとして到達するのは8.8%にすぎない。約56%はブランド検索を経由して着地している。

Demandbaseが数えた260万は前者だ。後者は数えられていない。つまり手元のレポートに映るAI流入は、実際にAIが動かした需要の1割前後ということになる。残りは「オーガニック検索(指名)」や「ダイレクト」の中に溶けている。

GA4は2026年5月、既定チャネルグループにAIアシスタント用のチャネルを追加した。認識済みのアシスタントからのリファラを検出すると、mediumディメンションに ai-assistant が自動で入る。それ以前は手動のカスタムチャネルグループが必要で、かなりの割合がダイレクトに落ちていた。改善ではあるが、拾えるのは8.8%側だけであることは変わらない。

「AI流入の質」は、まだ誰も決着をつけていない

流入の価値についても、公開データは真っ二つに割れている。

Invocaが7月14日に出したベンチマークでは、ChatGPT経由の電話がリード化する率は49%で、同社が計測した全チャネル中で最高だった。Ahrefsの調査ではAI検索経由の訪問者のコンバージョン率が従来オーガニックの23倍。Microsoft Clarityが1,200超のパブリッシャー・ニュースサイトを分析した結果では3倍。一方で、973のECサイト(合計売上200億ドル規模)を対象にした調査では、ChatGPT経由の流入はコンバージョン率でもセッションあたり売上でも従来チャネルを下回った。

3倍から23倍まで散らばり、下回る結果もある。これは「AI流入の質」という単一の変数が存在しないことを示している。手法と業種で結論が変わる以上、他社のベンチマークを自社の期待値に使うのは危うい。

IABが8月にまとめた計測標準では、AI可視性を何らかの形で計測しているブランドは16%にとどまる。20社超のベンダーが同じブランドについて食い違うスコアを売っている状況で、この16%という数字は「まだ誰も基準を持っていない」ことの裏返しでもある。

実務としてどう設計するか

AI流入のリファラ数をKPIにしない。 8.8%を最大化する施策は、残り91.2%を素通りする。伸びても縮んでも、意思決定の材料にならない。

指名検索のボリュームを、AI可視性の代理指標として基準線化する。 Search Consoleのブランドクエリのインプレッションと、GA4のAIアシスタントチャネルを並べて置く。前者が動いて後者が動かない、という乖離こそが56%側の輪郭になる。

チャネルの脆さを前提に置く。 2025年8月、Profoundの調査はOpenAIがRedditとWikipediaへ引用の重みを移した結果、ChatGPTからのリファラルが7月下旬比で52%落ちたことを記録している。1回のランキング変更で半減し、また倍増する。これは配信チャネルというより、依存先の挙動だ。

そしてもう一点。DemandbaseもSimilarwebもInvocaも、自社プラットフォームのデータを自社の営業材料として出している。方法論は記述されているが監査はされていない。数字を使うときは、その条件ごと引用するのが誠実だろう。

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