「昔ながらの『1位から10位』は、マッピングするのが難しい」——Googleのジョン・ミューラー氏が9月10日、Redditにそう書いた。順位という指標を作っている側が、その指標が実態を写せなくなったと認めた発言である。
何が起きたか
発端は、Search Consoleの生成AI関連(Gen-AI)パフォーマンスレポートで表示回数がどう数えられるのかという質問だった。ミューラー氏はヘルプドキュメントの内容を繰り返したうえで、こう付け加えている。
掲載順位をこれらに対して有用な形で算出するのは難しいので、現状は多くの検索機能と同じくブロックとして扱っており、Gen-AIパフォーマンスレポートでは切り出していません。いまの検索結果ページはユーザーが操作する方法がたくさんあるので、昔の「1位〜10位」はマッピングするのが、あるいはサイト運営者にとって有用なものにするのが難しいのです。
そのうえで「掲載順位の追跡について何が有用か、意見があればぜひ聞かせてほしい。チームと議論する」と締めている。仕様の説明であると同時に、代替案を持っていないという告白でもある。
事実として、現在のSERPにはAI Overviews(その上部に複数の引用)、AIモード、強調スニペット、PAA、各種カルーセルが混在する。「1位」という座標が指す場所が、クエリごとに、そしてユーザーの操作ごとに変わる。Googleが順位を「ブロック単位」でしか扱えないと言っているのは、この構造の必然的な帰結だ。
同じ週に、もうひとつの数字も揺れた
翌9月11日、Search Consoleのページインデックス登録レポートから2026年6月分のデータが大きく欠落していることが報告された。Googleは今月に入って一時的なインデックス関連の報告バグを認めている。
本誌は9月9日にGA4・Googleビジネスプロフィール・Search Consoleの3つが同時期に計測を止めた件を報じた。今回のインデックスレポートの欠落は、その4件目にあたる。
ここからは考察だが、この2つを並べると別のものが見えてくる。片方は「データが一時的に取れない」というオペレーションの問題で、いずれ復旧する。もう片方は「指標の定義そのものが実態を写せない」という設計の問題で、復旧という概念がない。前者は待てば直る。後者は待っても直らない。
そして実務で重いのは、明らかに後者だ。
「順位が上がりました」が報告として成立しなくなる
9月8日にGoogleが公開した検索体験の地域差に関するドキュメントは、同じ検索クエリでも地域によってSERPの部品構成が違うことを公式に認めたものだった。今回のミューラー氏の発言は、そこに「同じ地域の同じクエリでも、順位という座標が安定しない」という一層を重ねる。
順位計測ツールが返す数値が無意味になるわけではない。デスクトップ・特定ロケール・特定タイミングという条件を固定すれば、依然として比較可能な数字は出る。だがそれは「Googleが公式には算出を放棄した指標を、外部が条件を固定して近似したもの」であって、ユーザーが実際に見た画面の代表値ではない。この2つを混同したまま「平均順位が3.2位に改善しました」と報告することが、いま起きているリスクだ。
本誌が9月10日に報じたPAAの回答が14か月で97%までAI生成に置き換わった件も、この文脈に置くと意味が変わる。順位という座標が薄まると同時に、SERP上で人間が書いた文章が占める面積そのものが減っている。「何位か」を追う前に、「そもそも自分の文章がどの部品として、どれだけの面積で出ているか」を見る必要がある。
何に置き換えるか
Googleが代替指標を持っていない以上、現場が暫定的に組むしかない。実務で組み直せる順に挙げる。
-
平均順位を主KPIから外す。 モニタリング指標としては残してよいが、レポートの見出しには使わない。「昔の1位〜10位はマッピングが難しい」とGoogleが言った以上、その数字を成果の主語にする根拠が弱い。
-
クエリ×表示回数×クリックの実数に戻す。 Search Consoleが確実に返しているのはこの3つだ。順位という抽象化を一段外して、どのクエリで何回出てどれだけ押されたかを直接見る。母数が変わるので前期比較は慎重に。
-
引用・言及のカバレッジを別立てで測る。 Gen-AIパフォーマンスレポートは順位を分離しないが、表示回数とページは返す。「AI回答の中に自社が部品として含まれた回数」を、順位とは別のKPIとして立てる。ブロック単位でしか扱われないなら、こちらもブロック単位で測るのが筋が通っている。
-
指名検索とダイレクト流入を補助線にする。 AI回答内で読まれてもクリックが発生しないケースを、後追いの指名検索で間接的に捉える。粗い代理指標だが、順位が壊れた場所を埋めるものとしては現実的だ。
反論も置いておく
「順位はもう死んだ」という主張は、この5年で何度も出ては引っ込んだ。実際、多くのビジネスクエリでは依然としてオーガニック10本のリストが機能しており、そこで上位を取ることの価値は消えていない。ミューラー氏が言ったのは「マッピングが難しい」であって「無意味だ」ではない。順位計測をいますぐ捨てるのは行き過ぎだろう。
同時に、彼が「何が有用か教えてほしい」と外部に問いかけている事実は軽くない。指標の設計者が設計を諦めている状態で、その指標を契約上のKPIに据え続けるのは、クライアントに対してもフェアではない。契約更新のタイミングで、順位保証やターゲット順位を成果指標から外す交渉を始めるだけの根拠は、9月10日に揃った。