2026年8月1日(土)
業界動向

検索クリックが減っても、広告は伸びる——Google・Meta・Microsoft決算が示した「ゼロクリック時代の逆説」と、AIコストという次の請求書

7月下旬に出揃った米大手3社の決算は、AI検索の拡大でサイト流入が減る一方、プラットフォームの広告収益は軒並み2桁成長という「逆説」を示した。Alphabetの検索広告は前年比17%増、Metaは広告単価が12%上昇。一方でMetaは費用が55%増え、決算発表後に株価が急落した。広告費はどこへ流れているのか、そしてAIの推論コストという請求書は最終的に誰が払うのか。3社の数字を重ね、日本のマーケターが予算配分とKPI設計で見直すべき前提を考察する。

WebTech Journal 編集部

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「AI検索の拡大でクリックが減り、広告ビジネスは苦しくなる」——この1年、業界で繰り返されてきたシナリオは、7月下旬の決算ウィークで少なくとも短期的には裏切られた。広告は、伸びている。それも大幅に。

3社の数字:広告は軒並み2桁成長

7月22日発表のAlphabetの2026年第2四半期決算は、売上高1,198億ドル(前年比24%増)。広告収益全体は816億ドルで14.5%増、うち検索広告(Search & other)は633億ドルで17%増、YouTube広告は111億ドルで13%増だった。

7月29日発表のMetaの第2四半期決算は、売上高608億ドル(28%増)。広告収益は27%増で、内訳はインプレッション14%増・広告単価12%増。数だけでなく「単価」が2桁で上がっている点が重要だ。

同週に発表されたMicrosoftの2026年度第4四半期決算でも、検索・ニュース広告収益(トラフィック獲得コスト除く)は10%増。3社とも、AI検索時代の真っ只中で広告を2桁成長させた。

「流入は減るのに広告は伸びる」をどう読むか

本誌は先日、検索の43%にAI Overviewsが表示され、CTRが半分以下になる構造変化を報じた。サイト運営者への流入が細っているのは複数の調査が示す事実だ。それでも広告収益が伸びる理由は、突き詰めればひとつの原則に行き着く——広告費はクリックの場所ではなく、意思決定が起きる場所を追う。

ユーザーの比較・検討がAI Overviewsやアプリ内で完結するなら、広告もその場に出れば成立する。流入減の打撃を受けるのはコンテンツで集客してきたメディアやサイト運営者であり、意思決定の「場」を握るプラットフォーム自身ではない——決算はこの非対称を数字で裏付けた格好だ。

Metaの単価12%上昇も示唆的だ。同社は要因を細かく開示していないが、Advantage+をはじめとするAI最適化の浸透で広告効果が上がり、オークション価格を押し上げているという構図が考えられる。効果が上がるほど単価も上がる——広告主にとっては手放しで喜べない循環でもある。

勝者の内側にも「請求書」は来ている

ただし、決算は勝者の内側のコストも露わにした。Metaの総費用は420億ドルで55%増。純利益158億ドルは市場予想を下回り、フリーキャッシュフローは約8億ドルまで細った。広告が絶好調でも、AIインフラ投資が利益を圧迫し、株価は時間外で約10%下落した。

この構図は本誌が報じた「AIは無料」の終わり——3社3様のコスト回収モデルの続きとして読める。膨張するAIコストは、いずれ広告単価の上昇圧力、あるいはAI機能の課金として市場に転嫁されていく可能性が高い。広告が伸びている今の数字は、その転嫁が始まる前の風景かもしれない。

日本のマーケターが見直すべき前提

第一に、KPI設計。セッションやサイト流入を主指標に置いたままでは、プラットフォーム内で完結する検討・購買行動を捉えられない。サイト外コンバージョンやプラットフォーム内指標の整備が急務だ。

第二に、単価上昇への備え。オークション単価が構造的に上がるなら、防衛線はクリエイティブの質とファーストパーティデータの精度になる。

一方で、楽観シナリオへの反論も添えておきたい。Alphabetの検索広告17%増には、AI Overviews内広告など新しい広告面の寄与が含まれるとみられ、従来型のキーワード広告の効率が維持されている保証はない。「広告全体が伸びているから自社の検索広告も安泰」とは読めない点には注意が必要だ。

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