2026年7月30日(木)
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米手芸チェーンMichaelsのAIアシスタント「Ask Mike」、CV率は従来のサイト内検索の2倍超——ゼロクリック時代、ECの主戦場が"サイト内"へ移る

米手芸用品チェーンMichaelsが、Google Cloudの「Gemini Enterprise for Customer Experience」で構築したAIショッピングアシスタント「Ask Mike」の初期成果を公表した。5月のローンチ以来7万5,000件の会話をこなし、利用者の購入率は従来のサイト内検索の2倍超だという。外部検索のゼロクリック化が進む今、なぜ「サイト内のAI」が次の勝負どころなのか。自社発表の数字を読む際の注意点と、日本のEC事業者への示唆を考える。

WebTech Journal 編集部

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6週間で本番投入、7万5,000会話

米国の手芸・クラフト用品チェーンMichaelsが、AIショッピングアシスタント「Ask Mike」の初期成果を明らかにした。Modern RetailやDigidayの報道によると、5月に告知なしでローンチしてから会話数は7万5,000件にのぼり、対話の27%が商品リンクのクリックまたはカート追加につながっている。同社のHeather Bennett社長(チーフカスタマーオフィサー兼務)は、Ask Mike利用者がオンラインで購入に至る割合は、従来のサイト内検索利用者の2倍超だと述べた。

Ask MikeはGoogle Cloudの「Gemini Enterprise for Customer Experience」を使って構築され、同社のWebサイト(デスクトップ・モバイル)とiOS/Androidアプリに組み込まれている。注目すべきはスピードだ。構想から本番投入まではわずか6週間。Google Cloud上にデータ基盤を整備済みだったことが効いたという。同じパッケージはUlta Beauty、Macy's、The Home Depotなども採用しており、米小売のサイト内AI導入は「実験」から「量産」の段階に入りつつある。

なぜ今「サイト内」なのか——外の検索が閉じていく

この動きは、外部検索の構造変化と裏表の関係にある。検索の43%にAI Overviews、AI Mode訪問は1年で2.2倍——Googleが"リンク集"から"目的地"へ変わる構造変化と、SEOの新しい防衛線で報じたとおり、Googleの検索結果はAIが答えを完結させる方向へ変わりつつある。SparkToroがSimilarwebのクリックストリームデータを分析した調査では、2026年1〜4月の米国Google検索の68%がクリックなしで終わった。検索エンジンからECサイトへ流れ込むトラフィックの蛇口は、確実に細くなっている。

流入が減るなら、入ってきた訪問者一人あたりの転換率を上げるしかない。そこで浮上するのが、長年「キーワード一致で商品一覧を返すだけ」のまま放置されてきたサイト内検索だ。従来型の検索窓は「初心者向けの水彩セットで3,000円くらいのもの」といった曖昧な相談に答えられなかった。会話型AIはまさにこの領域を埋める。対話の27%が商品クリックかカート追加に至るというAsk Mikeの数字は、AIが"接客の入口"として機能し始めたことを示す材料と読める。

数字を鵜呑みにする前に

一方で、これらの数値はすべて同社の自己申告であり、割り引いて読む必要がある。最大の論点はセレクションバイアスだ。わざわざAIアシスタントに話しかける客は、そもそも購買意欲が高い可能性がある。「Ask MikeがCV率を2倍にした」のか、「CV率が高い客がAsk Mikeを使った」のかは、この発表だけでは区別できない。7万5,000会話という規模も、全サイトトラフィックに対する比率が示されていないため、事業インパクトの大きさは判断できない。導入判断の材料にするなら、自社でのA/Bテスト設計とセットで考えるべきだろう。

日本のECは何を準備すべきか

日本でもサイト内検索やレコメンドのAI化は進み始めているが、Michaels事例の本当の教訓は「6週間」の内訳にある。速さを支えたのは、商品データとクラウド基盤の事前整備だ。逆に言えば、商品情報がカテゴリ横断で構造化されていない、在庫・価格データがリアルタイムに引けない状態では、どのAIツールを入れても会話の質は上がらない。ツール選定より先に、商品マスタの整備状況を点検するのが順路だ。

筆者は、外部検索のゼロクリック化が進むほど、「検索エンジン最適化」への投資と「サイト内体験最適化」への投資のバランスが後者へ寄っていくと見ている。訪問者数を追う時代から、1訪問の密度を追う時代へ。Ask Mikeはその転換点を示す、わかりやすい事例だ。

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