検索行動のうち生成AIを使う人が、日本で初めて過半数を超えた。だが本当に読むべきは、その52.3%という数字ではない。伸び幅の1位がChatGPTではなかったという一点にある。
サイバーエージェントの専門組織「GEO Lab.」が9月11日に公表した生成AIのユーザー利用実態調査(2026年8月期)は、全国15〜69歳の男女9,278人を対象にした大規模調査だ。国内のAI検索を継続定点で追っている数少ないデータであり、今回の回で初めて分水嶺を越えた。
数字を並べると、勢力図は「ChatGPT一強」ではない
AIモードを含む生成AIの検索利用率は52.3%。2026年2月調査から7.5ポイント、2025年5月調査からは31.0ポイントの上昇である。一方で検索エンジンの利用率は86.9%と、2月の88.7%からわずかに下がっただけだった。つまりAI検索は検索エンジンを置き換えたのではなく、上に積み上がっている。
サービス別に見ると、Googleが73.4%、YouTubeが46.3%、Yahoo!が40.7%。生成AI側はChatGPTが30.6%で首位、次いでGoogleのAIモードが28.4%、Geminiが23.2%と続く。ChatGPTの30.6%はInstagram(31.8%)に迫り、X(29.2%)をすでに上回っている。
ここまでは「ChatGPTが強い」という、よく見る結論だ。しかし半年間の増分を見ると景色が変わる。
- ChatGPT: 29.1% → 30.6%(+1.5ポイント)
- AIモード: 21.0% → 28.4%(+7.4ポイント)
- Gemini: 15.6% → 23.2%(+7.6ポイント)
ChatGPTはこの半年、ほぼ横ばいだ。日本のAI検索の利用率を押し上げたのは、AIモードとGeminiというGoogleの2つのプロダクトである。しかもAIモードとGeminiを足すと51.6%で、ChatGPTの30.6%を大きく引き離す(重複利用があるため単純合算はできないが、面の広さは明らかだ)。
「AI検索対策」と「Google対策」が、日本では同じ話になりつつある
この構造は、実務者の優先順位を大きく変える。
米国発の議論では、AI検索対策はしばしば「ChatGPTに引用されること」とほぼ同義で語られる。しかし日本の数字が示しているのは、AI検索の増分の大半がGoogleの検索結果の内側で起きているという事実だ。ユーザーは新しいアプリに乗り換えたのではなく、同じGoogleを開いて、出てくる画面がAIになった。
この見方は、本誌がここ数日報じてきた個別の動きとも整合する。Googleは9月上旬に完全一致・フレーズ一致のキーワードをAI Modeの広告配信対象に加える実験を進めており、同じ週に検索体験が地域ごとに異なることを公式ドキュメント化した。オーガニックでも、PAA(他の人はこちらも質問)の回答の97%がAI生成に置き換わったことを本誌は報じている。広告面も、ナレッジ面も、質問面も、すべてGoogleのSERPの中でAI化が進んでいる。
したがって日本市場においては、「GEO(生成エンジン最適化)の専任チームを別に立てる」よりも、既存のSEO・Google広告の運用チームがAI面を担当範囲に組み込むほうが、費用対効果の面で合理的である可能性が高い。少なくとも、ChatGPT向けの施策だけに予算を割くのは、この調査を見る限り過小投資ではなく誤投資に近い。
「ゼロクリック」は言い過ぎ——ただし条件つきで
AI検索の議論は「クリックが消える」という悲観論に傾きやすい。今回の調査は、そこに慎重な材料を提供している。
AIの回答に表示されたURLをクリックすることが「よくある・時々ある」と答えた人は61.0%。AIがすすめた商品・サービスをさらに詳しく検索する人は77.3%に達した。さらに、AIのおすすめをきっかけに実際に購入・利用した人は58.7%で、2月調査の54.8%から3.9ポイント上昇している。
AIの回答は終着点ではなく、次の行動の起点として機能している。この点は、サイト側にとって明確な朗報だ。
ただし2つ留保がある。1つは「よくある」と「時々ある」を合算した数字であり、クリック頻度の実態はこれより弱い可能性があること。もう1つは、クリックが残るとしてもクリックの前に候補が絞られているという構造変化だ。用途別の数字がそれを示している。ショッピングでは「商品の情報収集」で最初にAIを使う人が10.4%なのに対し、「候補商品の価格比較」は15.5%。旅行の「宿泊施設の比較」は14.8%、不動産の「物件条件の比較」は14.6%。比較・絞り込みという意思決定の直前工程で、AIの利用率が情報収集フェーズを上回っている。
流入は残るが、候補リストに載らなければそもそも流入対象にならない。これが今回のデータの本質的な怖さだ。
世代別の広がりと、実務での次の一手
年代別では10代が80.6%、20代61.1%、30代53.3%と続き、40代も50.2%で初めて半数を超えた。50代46.1%、60代39.6%と、全世代で拡大している。BtoBの意思決定層が集中する40〜50代がこの水準に来たことは、法人向けマーケティングにとっても他人事ではない。
検索行動の「半分以上を生成AIに切り替えた」人は46.6%で、2025年5月調査から16.5ポイント上昇した。移行はもう周辺部の話ではない。
実務者が今週から着手できることは3つある。
- AIモードとAI Overviewでの自社露出を、ChatGPTより先に測る。 日本では増分がそこにある。専用ツールがなくても、主要クエリを手動で叩いてスクリーンショットを定点保存するだけで傾向はつかめる。
- 比較・絞り込みクエリのコンテンツを優先する。 「A社 B社 比較」「◯◯ 料金 相場」といった、これまで後回しにされがちだった中間ファネルのページが、AIに読まれる素材になる。情報収集用の入門記事より投資対効果が高い局面に入っている。
- AI経由の流入を分けて見る計測を用意する。 61%がクリックしている以上、その流入は既に発生している。参照元がAIサービスのセッションをセグメントとして切り出しておかないと、「オーガニックが減った」という粗い結論しか出せない。
数字は「AIに置き換えられる」とは言っていない。言っているのは、選ばれる場所が一段手前に移ったということだ。